CXCL12-CXCR4軸は造血幹細胞や急性白血病細胞の骨髄での維持や増殖に必須であるが、CXCL12に対する応答性がどのような分子メカニズムで制御されているのかは完全には明らかにされていない。 CXCL12応答性を制御する因子を網羅的に探索することを目的として、T細胞性急性リンパ性白血病 (T-ALL) 細胞株を用いて、CRISPRスクリーニングとCXCL12に対するマイグレーションアッセイ系を融合させた独自のスクリーニングを実施した。その結果、cBAFの構成要素をコードする遺伝子が複数ヒットした。 cBAFの機能を遺伝学的に抑制すると、転写因子RUNX1の結合領域特異的にクロマチンアクセシビリティが低下した。cBAFの機能抑制はRUNX1のゲノムへの結合を障害することを確認した。cBAFの機能抑制は、RUNX1により制御されている遺伝子群の発現を有意に低下させた。 cBAF或いはRUNX1の機能を遺伝学的に抑制すると、CXCL12の受容体CXCR4の発現が著明に低下していた。興味深いことに、cBAFの機能を抑制した細胞において、レンチウイルスを用いてCXCR4 cDNAを発現させることでCXCR4の発現をレスキューすると、遊走活性はほぼ完全に回復した。RUNX1はT-ALLの細胞自律的に増殖に必須であることが知られている。cBAF或いはRUNX1の機能を遺伝学的に抑制すると、T-ALLの増殖に必要なことが知られているCDK6などの発現が低下し、細胞増殖が抑制された。 T-ALL-PDX modelを用いて、cBAFの機能を抑制するBRM014のin vivoの抗腫瘍効果を評価した。3患者由来の細胞で実験を行い、いずれのモデルにおいてもBRM014は骨髄中のがん細胞数を有意に低下させた。これらのことは、cBAFがT-ALLの有望な治療標的であることを示している。
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