研究課題
Isocitrate dehydrogenase (IDH)遺伝子変異をもつ白血病は変異型IDHにより産生される代謝産物(オンコメタボライト)が腫瘍化に関わっているとされている。我々はこれまでの研究によりIDH変異白血病細胞ではオンコメタボライト非依存性の脂肪酸代謝異常による細胞死耐性が認められることを明らかにした。本研究はこの薬剤耐性メカニズムの全容を明らかにし、脂肪酸代謝を標的とする抗炎症薬の併用によるIDH変異腫瘍細胞根絶の可能性をマウスモデルや臨床サンプルを用いて検証することを目的とした。IDH変異とアラキドン酸代謝を結ぶ分子メカニズムに関しては、IDH2変異白血病細胞ではリン脂質代謝酵素であるホスホリパーゼC (PLC)、特にPLCB1, PLCG1のプロモーター領域のメチル化を介して発現が低下していること、さらにこのメチル化は変異型IDH阻害剤の短期間の投与では元に戻らないことを明らかにした。脂肪酸代謝を標的とする抗炎症薬の併用によるIDH変異腫瘍細胞根絶の可能性について、IDH2変異ヒトAML細胞株TF-1で得られた結果を一般化するため、急性単球性白血病細胞株THP-1に変異型IDH2を過剰発現させた細胞を用いて実験を行い、TF-1と同様に抗炎症薬併用による抗腫瘍効果を確認した。マウスモデルに関しては、IDH2変異TF-1細胞の免疫不全マウス(MSTRGマウス)への移植実験を行った。大腿骨内へ細胞株を直接移植し、腫瘍の生着を得たマウスに薬剤を経口投与した。治療終了後にマウスを安楽死させて骨髄を解析する方法を用いて治療効果を判定し、抗炎症薬併用による治療の有効性を確認した。AML患者由来骨髄細胞を用いた薬剤治療実験は複数の患者細胞の移植を試みたがいずれもマウスへの生着を得ることができなかった。以上の結果を論文にまとめ、Cancer Science誌に掲載された。
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