Ezh2-/-マウスとCalr10d/+マウスを交配することでそれぞれCalr10d/+; Ezh2-/-マウス、Ezh2-/-マウス、Calr10d/+マウスを得た。これらの生存期間は、Ezh2-/-マウス、Calr10d/+マウスの大半が18-24ヶ月だったのに対して、Calr10d/+; Ezh2-/-マウスは10-18ヶ月で多くが死亡した。死亡直前のCalr10d/+; Ezh2-/-マウスから骨髄・脾臓を採取して解析したところ、約半数は脾腫・骨髄線維化認めるが骨髄芽球の増生は認めない重症MPNであり、残りの半数は脾腫に加えて骨髄芽球の増生を認めるAMLであった。AMLを発症したマウスの骨髄細胞を野生型マウスに移植すると、AMLを発症して数ヶ月で死亡した。 そこで、AMLや重症AMLを発症する前の生後10ヶ月で各遺伝子型マウスの造血(脾臓の重量や骨髄の細胞数、細胞分画など)を比較した。意外なことに、Calr10d/+; Ezh2-/-マウスは軽度の脾腫や骨髄球系細胞の増加を認めるのみで、、Ezh2-/-マウス、Calr10d/+マウスと大きな差を認めなかった。さらに造血幹細胞分画(LSK細胞)のRNAシークエンスを行ったところ、Calr10d/+; Ezh2-/-マウスのLSKではCalr10d/+だけでなくEzh2-/-マウスと比較しても、ポリコーム標的因子の上昇が認められた。特に、Il7rは以前の報告でJak2V617F/+;Ezh2-/-マウスとJak2V617F/+マウスのLSK同士の比較でも発現上昇が認められていた。Il7rはリンパ球分化に関わる分子であるが、造血幹細胞から骨髄球系への分化や、組織における骨髄球系細胞の維持に必要との報告もあり(Exp Hematol. 2020;90:39)、病態への関与が疑われる。
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