研究課題/領域番号 |
21K08400
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
國本 博義 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80464923)
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研究分担者 |
中島 秀明 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (30217723)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | YCU-AML1 / OCI-AML20 |
研究実績の概要 |
昨年度までの研究からinv(3)/t(3;3)のみを有する細胞に比べてinv(3)/t(3;3)と-7を有する白血病細胞の方が抗がん剤シタラビンへの耐性を示すという仮説は成立しないことが判明した。代わりにinv(3)/t(3;3)と-7を有する白血病細胞特異的に薬剤感受性を示す化合物を網羅的に探索するためにTocriscreen 2.0を用いて解析したところ、エピゲノム因子Xに対する阻害剤がinv(3)/t(3;3)と-7を有するYCU-AML1とOCI-AML20に特異的に高い感受性を示すことが確認された。上記薬剤スクリーニングで同定した分子X阻害剤について、inv(3)/t(3;3)単独株(Kasumi-3)、-7単独株(Mono-7)、inv(3)/t(3;3)と-7を有する細胞株(YCU-AML1、OCI-AML20、UCSD-AML1)を用いて細胞増殖抑制効果を評価した。In vitro培養系を用いて、分子X阻害剤を培養液に添加して増殖曲線を解析した結果、YCU-AML1、OCI-AML20及びUCSD-AML1では細胞増殖が阻害剤添加により有意に抑制されたのに対して、Mono-7とKasumi-3では増殖は抑制されなかった。以上から分子X阻害剤はinv(3)/t(3;3)と-7を有する白血病細胞特異的に増殖抑制効果を発揮することが示唆された。分子X阻害剤の細胞増殖抑制効果の発現機序を明らかにするため、YCU-AML1を用いて細胞周期解析並びにアポトーシス解析を行なった。その結果、分子X阻害剤存在下で培養した細胞ではコントロールに比べてAnnexin V+分画の有意な増加を認めたのに対して、増殖期にあるDAPI+ Ki67+分画の減少は認められなかった。以上から分子X阻害剤はYCU-AML1に効率的にアポトーシスを誘導することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に策定した研究計画を概ね遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではinv(3)/t(3;3)と-7の両者を有する白血病細胞の生存、アポトーシス誘導効率に対するエピゲノム因子X阻害の影響をin vivoの実験系で明らかにするとともに、分子X阻害剤のアポトーシス誘導に関わる分子基盤を明らかにするため、以下の実験を行う。 実験①:inv(3)/t(3;3)単独群及びinv(3)/t(3;3)と-7を有する細胞群の異種移植モデルにエピゲノム因子X阻害剤を投与し、治療後に残存した末梢血・骨髄・脾臓CD33陽性細胞の割合が低く、また増殖期分画(Ki67+/DAPI+)の割合が低くアポトーシス誘導分画(Annexin V+/DAPI-)の割合が高いのかを確認する。 実験②:エピゲノム因子Xがinv(3)/t(3;3)と-7の両者を有する白血病細胞のアポトーシス回避に関わる分子経路を明らかにするため、賦形剤または分子X阻害剤で治療後のYCU-AML1及びOCI-AML20からDNA/RNAを抽出し、CHIPシーケンスとRNAシーケンスを実施する。これによりエピゲノム因子Xが直接その転写を制御する下流因子のうち、inv(3)/t(3;3)と-7の両者を有する白血病細胞のアポトーシス回避に関わる分子を同定していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、inv(3)/t(3;3)のみを有する細胞に比べてinv(3)/t(3;3)と-7を有する白血病細胞の方が抗がん剤シタラビンへの耐性を示すという仮説は成立しないことが判明し、当初の研究計画からの修正を余儀なくされた。このため、申請時に想定していた使用計画通りに支出が進まず、次年度使用額が生じる要因となった。今後の研究推進方策の欄に記載の通りの研究計画を遂行するために、以下のような新たな使用計画を策定した。 実験動物費用(600千円、マウス飼育費、骨髄移植レシピエント用マウス購入費) 試薬備品購入費(550千円、細胞周期解析試薬、アポトーシス解析試薬、フローサイトメトリー用抗体試薬、培養液及びリン酸緩衝生理食塩液、エピゲノム因子X阻害剤、ピペッター、チップ、細胞培養用ディッシュ・プレート)
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