近年の多発性骨髄腫(MM)の標準治療にlenalidomide(Len)は必須の薬剤であり、初発時から再発再燃時まで広く用いられている。しかしながら、Len耐性へと至る機序については不明な点が多く、このためLen耐性は治療上の重要な課題となっている。従ってそのメカニズムの解明はさらなる治療成績の向上に不可欠である。私たちはクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIPシークエンス)を用いたゲノムワイドな解析からLen耐性機序の一つとしてactivator protein-1(AP-1)ファミリー転写因子であるc-Fosを見出した。c-FosによるLen耐性獲得メカニズムを解析したところ、1)c-FosがIKZF1と複合体を形成し、骨髄腫細胞の生存や増殖に必須のIRF4を含むIKZF1標的遺伝子の転写を活性化させること、2)Len処置後、c-Fosが残存することによりIRF4等の発現が維持され、このことがLen耐性に働くこと、3)in vitoroにおいてAP-1阻害剤T-5224とLenの併用は2種類の骨髄腫細胞において、相加/相乗効果が得られること、4)この2剤の併用は異なるマウスモデルにおいても、有意な腫瘍抑制効果および生存期間の延長をもたらすこと、を明らかにした。従って、LenとAP-1阻害剤の併用はLen耐性の解除のみならず、治療成績の向上も期待できるなど、臨床的に意義のある研究内容と言える。
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