研究課題/領域番号 |
21K08407
|
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
冨田 章裕 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80378215)
|
研究分担者 |
佐谷 秀行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (80264282)
安田 貴彦 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 分子診断研究室長 (20723977)
杉原 英志 藤田医科大学, 共同利用研究設備サポートセンター, 准教授 (50464996)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 悪性リンパ腫 / リキッドバイオプシー / 遺伝子変異 / 微小残存病変 |
研究実績の概要 |
悪性リンパ腫病型のうち、既に特徴的な遺伝子異常がこれまでに報告されている病型である、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(中枢神経リンパ腫、眼内リンパ腫、縦隔大細胞型を含む)、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫に着目して、検体集積を行なった。検体は、診断時の生検材料(生検時の生検体および凍結保存検体、ホルマリン固定パラフィン包埋検体)、末梢血血漿を対象とし、可能な症例においては、脳脊髄液や眼房水、硝子体なども検討対象とした。これらの体液由来検体は、診断時治療開始前及び治療開始後、寛解到達後の経過観察時などに経時的に採取し、保存を行なった。症例集積の効率を上げるため、当施設の脳神経内科、脳神経外科、眼科にも協力を要請し、検体集積を行なった。 また自施設内において、分担研究者とともに全エクソン解析および網羅的RNA 発現解析を実施できるよう、実験系の立ち上げを行い、今後の疾患特異的、患者特異的な遺伝子異常の検出を可能とする環境の整備を行なった。また、特定の遺伝子変異については、デジタルPCR法を用いた検出についての精度確認を行い、臨床検体からの微量のDNAを用いた遺伝子変異解析の信頼度の向上を目指した。一部の特異な臨床経過を示した症例(治療抵抗性の獲得など)について、初診、再燃時の経時的に採取された検体を用いて網羅的遺伝子変異解析を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性リンパ腫を疑い生検を実施された症例から得られた生検検体の集積を行なった。また、末梢血血漿、脳脊髄液、硝子体液などの体液検体は、初発時および治療経過に伴い、それぞれの症例について複数回採取を行なった。2021年度に採取した生検組織検体は約120検体、体液検体は約300検体であり、概ね予定通りの検体集積が行われていることを確認した。 遺伝子変異解析の系の立ち上げについては、デジタルPCRの精度確認について、当該研究室内で実施を行い、また当学の藤田がんセンターにおける全エクソン解析および網羅的RNA発現およびシーケンス解析については、分担研究者により運用が開始された。通常ゲノム検体およびリキッドバイオプシーで得られた遊離DNA検体の双方において、解析が可能であることを確認した。遺伝子変異解析の系の立ち上げについて、順調に進んでいると判断される。 一部の治療抵抗性獲得症例から得られた初診再発のペア検体を用いた網羅的遺伝子変異解析を行い、治療抵抗性に関わる遺伝子異常の検出が可能であることを確認した。また、これまでに集積された検体で、既知の遺伝子変異を保有する症例から得られた末梢血遊離DNA、脳脊髄液遊離を用いた経時的な微小残存病変解析も開始された。未だパイロット的な解析ではあるが、概ね順調に研究が進んでいると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度にいても、引き続き検体集積を進める予定である。自施設のみならず、関連施設からの検体集積についても検討を開始する。 遺伝子変異解析系に関しては、微小残存病変の解析に適した初発時検体での使用を目的とした独自パネルの開発を進める。また、微小残存病変の経時的解析に用いることができるさらに解析対象を絞った、ミニマムなパネルの考案や、デジタルPCR法などによる、より個別化した情報に特化した解析法の確立を目指す。 さらに解析系の確立と並行して、特定の疾患群における前向き検体の集積を目指した臨床研究の立ち上げについて検討していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、検体集積と検査系の確立に注力をしており、検体の変異解析の症例数が少なかった。そのため、使用予定額を下回った。来年度に繰り越し、集積された検体を用いて経時的遺伝子変異解析に使用する予定である。
|