研究課題
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)、中枢神経リンパ腫(CNSL)などにおいては、反復する遺伝子異常が既に同定されている。本研究では、これらの患者の生検検体および血漿、脳脊髄液(CSF)、硝子体液などを採取して検体集積を行った。液体検体からは無細胞遊離DNA(cfDNA)を抽出して遺伝子解析を行い、従来法による確定診断前の疾患の検出や診断、治療開始後の微少残存病変(MRD)解析などに有用であるかどうか検討を行った。本解析では、droplet-digital PCR (ddPCR)ほか、全エクソン解析、RNAシーケンスを実施した。CSF-cfDNAを用いた検討では、MYD88/CD79B変異は検討されたCNSL(N=10)の8割に検出されたが、鑑別を要する中枢神経系感染性疾患や脱髄性疾患(N=20)においては検出されなかった。また、確定診断前に経時的に採取されたCSFを用いた検討では、当該変異が確定診断前に検出可能であることが示され、疾患の早期検出に有用である可能性を示した。変異検出によるCNSL診断については更なる議論を要する。再発IVLBCL (N=3)における、初診、再発、および経時的検体を用いた解析では、ddPCR を用いたMRD解析により臨床的な再発確認以前に再発兆候を検出できる可能性を示した。また、再発時のcfDNAにて新規獲得もしくは喪失した遺伝子異常を検出可能であり、分子病態の変化を検出可能であることを示した。抗CD20抗体使用後に CD20 陰性化を獲得した症例における、種々の経時的検体を用いた解析では、血漿cfDNA検体にてMS4A1 (CD20) 遺伝子の変異や構造異常について検出が可能であり、治療抵抗例における遺伝子解析においてリキッドバイオプシーが有用である可能性を示した。
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