研究実績の概要 |
マウス同種造血幹細胞移植を用いた肝臓GVHDモデルを確立した。病理学的検討では, 肝臓GVHDの主たる標的は胆管上皮であることが確認された。胆管周囲にT細胞やマクロファージが浸潤しており, 胆管上皮のアポトーシス (cleaved caspase-3発現)や, 黄疸の発症を伴っていた。肝障害発症後のday21に, LGR5陽性肝臓組織幹細胞が増加し, その後減少することを発見した。次に胆管上皮幹細胞の動態を明らかにすることを目指し, 肝臓右葉から胆管上皮を単離し, そこから得られる胆管上皮オルガノイドの定量を行い, 胆管上皮幹細胞の量的変化を観察する系を確立した。この系を用いた検討で, 同種造血幹細胞移植後の肝臓GVHDが発症した後の移植後day21に胆管上皮幹細胞が増加し, その後急速に減少することが判明した。これは, 肝臓GVHDによる胆管上皮傷害を修復するために, 幹細胞の活性化と増殖が生じるものの, それらの幹細胞もGVHDの標的となって修復が行われなくなることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は, 胆管上皮幹細胞障害のメカニズムを, オルガノイド培養系を用いて検討する。各種免疫細胞との共培養, 炎症性サイトカインの添加, サイトカインの阻害剤の添加などを用いて, 胆管上皮幹細胞障害のメカニズムを解明する。そのうえで, 胆管上皮幹細胞を標的とする, GVHD予防法や治療法の開発を目指す。
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