研究成果の概要 |
同種造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病(graft-versus-host disease: GVHD)は, 皮膚・腸管・肝臓を標的とし, 致死的になるうる重要な合併症である。申請者はこれまで、GVHDが主に腸管や皮膚の組織幹細胞を標的とすることで組織修復が障害されていることを報告していたが、もうひとつのGVHDの主要な標的臓器の一つである肝臓においては、組織幹細胞の役割はこれまでわかっていなかった。本研究では, 肝臓GVHDにおける, 胆管上皮細胞の組織幹細胞の動態や役割を明らかにすることを目指し, マウスの同種造血幹細胞移植モデルと肝臓オルガノイド培養系を用いて研究を行った。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
我々は, 肝臓GVHDで胆管上皮の組織幹細胞が傷害され, 胆管機能の増悪につながることを, 世界で初めて示した。さらに, 胆管上皮の組織幹細胞が傷害されるメカニズムが, マクロファージから産生されるTGF-betaであることも明らかにし, TGF-betaの阻害剤を用いて, 胆管上皮の組織幹細胞を保護できることを証明した。胆管上皮の組織幹細胞の機能を評価するために, 肝臓の胆管からのオルガノイドの作成効率を指標に行った研究であり, これまでに例のない方法である。こうした知見によって, 肝臓GVHDにおいて, TGF-betaを標的とする新規治療法の開発への道が開かれる可能性がある。
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