研究課題/領域番号 |
21K08411
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
小埜 良一 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (40422414)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 造血器腫瘍 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、前年度までに判明してきた、申請者の有する誘導型白血病発症モデルマウスを活用した、種々の造血前駆細胞や造血幹細胞集団において異なった白血病発症様式を示唆するいくつかの知見を踏まえた、詳細な分子細胞生物学的な解析を進めた。特に、そうした種々の白血病モデル細胞の作成過程における網羅的遺伝子発現解析を行ってみたところ、これまで、今回使用している白血病原因遺伝子との関連性の解析の乏しい、発がん関連遺伝子の関与を見出していたが、今年度は、そうした遺伝子の関与についての予備的解析を行い、最近エピジェネティックな役割が判明してきた遺伝子の関与が明らかとなってきた。そこで、そのエピジェネティック遺伝子に注目した解析を行ってみたところ、まず、申請者が用いている白血病原因遺伝子MLL-ENLによる直接的制御を受けて、発現上昇が生じることが判明した。また、白血病モデル細胞において、この遺伝子の機能阻害実験を行ってみると、白血病モデル細胞の増殖が抑制され、アポトーシスの割合の上昇も認められていた。さらに、このエピジェネティック分子と関連するエピゲノムの変動も観察可能であった。こうしたことを踏まえ、エピジェネティック遺伝子の機能を阻害した白血病モデル細胞のマウス骨髄移植実験も行ってみたところ、in vitroの実験結果から予想されたように、白血病発症能が著しく阻害されることも見出されてきた。こうした実験結果から、ある種の白血病に対する分子標的療法の標的分子経路の候補となりうるのではと考えて、さらなる詳細な機能解析実験を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究実施計画に沿って、前年度達成された誘導型白血病発症モデルマウスの骨髄から採取した、造血系細胞における白血病幹細胞能の獲得、獲得された性状の解析、獲得に関連する分子メカニズムの探索を発展させて詳細な機能解析へと進展させられており、おおむね順調に研究を進められている
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今後の研究の推進方策 |
本研究で見出されてきた、白血病幹細胞を生じる新規分子メカニズムの解析について、特定分子に絞り込んだin vitro実験およびin vivo白血病発症モデルでの解析を行えてきており、当初の研究計画における目的はおおむね達成されつつあり、この成果を論文発表していく予定である。また、今後の課題として、分子標的療法の可能性を探るなどの、新たな観点からの詳細な検討も進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子機能解析実験および骨髄移植実験が、当初の予想と比べ、非常に順調に進展し、予備実験などの実験に要する費用が少なくすんだため、一定金額が持ち越されることになった。これらは、今年度、治療標的候補としての可能性を探る実験を精緻に行っていく際に活用していく予定である。
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