研究課題/領域番号 |
21K08413
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉本 直志 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点准教授 (10447956)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 血小板 / HLAクラスI / NK細胞 / 免疫抑制分子 / プロテオミック解析 / ライブ動態解析 |
研究実績の概要 |
高度の血小板減少症では重篤な出血の予防や治療のために献血血小板の輸血が行われるが、血小板のHLAクラスIに対する同種抗体によって輸血患者の約5%では拒絶されてしまう。この様な血小板輸血不応症に対するユニバーサルな対策法としてHLAクラスI欠失血小板の開発が進んでおり、申請者は臨床製造が可能なiPS細胞由来血小板製造システムを用いてHLAクラスI欠失iPS細胞由来血小板を製造した。免疫原性の検証を行ったところ、他のHLAクラスI欠失細胞と異なり血小板はNK細胞に攻撃されないことを見出したが、その機序は不明であった。そこで本研究では、ヒト血小板が保持するHLA分子の有無とは独立したNK細胞に対する免疫逃避メカニズムを解明することを目的としている。 令和4年度はiPS血小板とその母細胞である巨核球株imMKCLの2セットのプロテオミックス解析の発現プロフィールのバイオインフォマティック解析から同定された、iPS血小板により高発現する免疫抑制性分子について、阻害抗体や阻害化合物等を用いたインビトロ共培養実験で機能検証を進め、TGFβを始めとする複数の分子の寄与を明らかにしつつある。 NK細胞との相互作用を観察するライブ動態解析では、iPS細胞由来血小板およびimMKCLで異なる動体を観察しえた。 また内在的にヒトNK細胞が発生させたヒト化マウスにおいて、HLAクラスIを欠失させたimMKCLや造血前駆細胞が、ヒトNK細胞の再構成レベルによって拒絶されるデータを取得し、インビボモデルとして適切であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS血小板とimMKCLのプロテオミックス解析では、得られた発現プロフィールのバイオインフォマティック解析を経て、iPS血小板に高発現する免疫抑制性分子を複数同定できており、さらに機能的に寄与するTGFβ等の候補分子の寄与の裏付けが進んでおり、概ね順調である。 また、NK細胞とiPS細胞由来血小板およびimMKCLを観察するライブ動態解析では、特異的な相互作用が示唆される一定のデータを取得できた。しかしまだ十二分なデータを蓄積できておらず、進捗目標からやや遅れている。 一方、内在的に機能的なヒトNK細胞が発生させたヒト化マウスの樹立に成功し、来年度に向けた準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
TGFβ等の候補分子の寄与を証明するにたるデータ、相互作用検証イメージングデータの蓄積を十分に行うとともに、NK細胞側の変化を裏付けるため、NK細胞のRNAシークエンシングを行う。 また血小板とNK細胞の免疫応答のビボ検証のため、NK細胞までが十分構築されたヒト免疫系再構築マウスを用いた循環検証において、候補分子の寄与を、阻害抗体などを用いて検証をすすめる。
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