当初の研究計画に沿って、令和4年度に下記の進捗があった。本研究成果をまとめ論文投稿中である。
2)MDS-iPS細胞を用いた病態再現:令和4年度に引き続き、非定型EVI1転座陽性MDS症例の血液細胞から樹立した複数のMDS-iPS細胞株、正常T-iPS細胞株、健常者iPS細胞株を胚様体形成法を用いて造血誘導し、造血前駆細胞(CD45+34+)、赤芽球系細胞(CD235a+)の割合を検討したところ、正常T-iPS細胞株と比較してMDS-iPS細胞株において有意にCD34陽性率の上昇、CD235a陽性率の低下を認め、元の症例で認めた血液成熟障害を反映していると考えられた。また造血前駆細胞分画でソートして、GM-CSF、G-CSF、IL3、IL-6、SCF、EPO存在下でコロニーアッセイを行ったところ、MDS-iPS株では骨髄球系、赤芽球系いずれのコロニー形成能も著明に障害されていた。 3)MDS-iPS細胞の網羅的エンハンサー解析:令和4年度に引き続き、MDS-iPS細胞株、健常者iPS細胞株を再分化させた造血前駆細胞のゲノムDNAを材料に、H3K27acのChIP-seqにより網羅的な転写制御領域の解析を行い、MDS-iPS細胞由来造血前駆細胞特異的に活性が亢進しているプロモーター、エンハンサー領域を同定した。 4)スーパーエンハンサーを標的としたEVI1発現抑制:複数のMDS-iPS細胞株由来造血前駆細胞を用いて、3)で同定された転写制御領域を標的としてBET阻害剤JQ1によるEVI1発現抑制効果を確認し、Annexin Vアッセイで用量依存性のアポトーシス誘導効果を確認した。健常者iPS細胞株でも同様の実験を行ったが、JQ1によるEVI1発現抑制、アポトーシス誘導効果を認めなかった。
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