研究課題
老齢BRMノックアウトマウスが得られたため、造血幹細胞を分取して骨髄移植を行ったところ、若齢マウスでは連続移植で初めて見られた長期再構築能の低下が、老齢BRMノックアウトマウス造血幹細胞では一次移植から早期に観察された。BRMノックアウトマウス造血幹細胞が幹細胞能を喪失するメカニズムを明らかにするため、胸骨ホールマウント免疫染色を行ったところ、5-FU投与後回復期の類洞構造の異常が認められたため、BRMは造血幹細胞を維持する微小環境ニッチを制御しており、その異常により造血幹細胞が影響される可能性が考えられた。骨髄移植後のマウスから分離した造血幹細胞を用いて行ったRNA シークエンスの結果、BRM ノックアウト造血幹細胞では免疫応答に関わる多くの遺伝子群の発現が低下していた。そのためBRM ノックアウトマウスに細菌エンドトキシンであるLPSを投与して免疫応答を観察したところ、野生型マウスで通常見られる脾臓の腫大がBRMノックアウトマウスでは見られず、さらに免疫細胞の特定の分化異常があることが明らかになった。また、クロマチンリモデリング複合体の基本的なサブユニットについてin vitroで再構成を行い、得られたタンパク質を合わせて複合体を形成させ、電子顕微鏡による観察を開始した。正しいクロマチンリモデリング複合体と思われる像がいくつか得られたが、今後単粒子解析にデータを供するには均一なサンプルを大量に得る必要があるため、タンパク質発現系の改良を行っている。
1: 当初の計画以上に進展している
当初は予期していなかった免疫応答に関する興味深い知見が得られたため。
野生型およびBRMノックアウトマウスにLPSを投与し、特に脾臓・リンパ節のほか骨髄・胸腺などにおける免疫応答の観察をさらに進める。異常が認められた注目する免疫細胞について、フローサイトメトリーによる評価とソーティングによる分取、また骨髄細胞の培養による免疫細胞への分化系の樹立を試みており、それらによってBRMが免疫応答を司るメカニズムを明らかにする。また、クロマチンリモデリング複合体の基本的なサブユニットについてin vitroで再構成を行い、得られたタンパク質を合わせて複合体を形成させ、電子顕微鏡による観察を開始した。正しいクロマチンリモデリング複合体と思われる像がいくつか得られたが、今後単粒子解析にデータを供するには均一なサンプルを大量に得る必要があるため、タンパク質発現系の改良を行っている。
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Medical Science Digest
巻: 67 ページ: 42-45
http://structure.med.kobe-u.ac.jp