研究課題/領域番号 |
21K08419
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
松井 啓隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (60379849)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨髄異形成症候群 / 急性骨髄性白血病 / R-loop / RNAヘリケース |
研究実績の概要 |
RNAヘリケースをコードする遺伝子の変異が血球減少を招き、造血器腫瘍を発症させるメカニズムの解析を行った。DEAD-box型RNAヘリケースのDDX41は、骨髄系造血器腫瘍の一部で生殖細胞系列バリアントが存在することが明らかにされており、典型的には、機能欠失型の生殖細胞系列バリアントを持つ例が、のちに反対アレルに体細胞変異(p.R525H)を獲得し発症する。しかしながら、ヒトに37種類あるDEAD-box型RNAヘリケースのうちDDX41変異のみが造血器腫瘍の発症原因となるのか、まだ明らかでない部分が多い。 本研究では、核内でDDX41に相互作用する分子の多くがRNAスプライシング関連因子であったという結果を根拠に、DDX41のRNAスプライシング因子としての側面に注目し解析を進めた。seCLIP-seqにより、DDX41が結合するRNA配列を検討したところ、コーディングRNAの特定領域にDDX41が相互作用することが明らかになった。またDDX41は、スプライシングC複合体の構成因子と結合し、これは既報とも矛盾しない結果であった。一方で、骨髄異形成症候群で典型的に認められるSF3B1やSRSF2変異の場合とは異なり、3'スプライスサイトの認識に直接関係するという証左は得られず、また疾患表現型も必ずしもこれらと同一ではないことから、従来のRNAスプライシング関連変異とは病的意義が異なるものであると考えられた。 更に詳細に解析したところ、DDX41の発現を抑制させた細胞において、R-loopの形成が誘導されることを発見した。現在、DDX41の発現や機能の障害がR-loopを蓄積させる機序の解明に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は順調に進捗している。seCLIP-seqによるDDX41の結合配列解析、RNA-seqによる遺伝子発現変化とRNAスプライシング変化の解析結果を起点に、DDX41のRNAスプライシング因子としての役割が明確になりつつある。 以下に記載の通り、DDX41の障害がR-loopを蓄積させる機序の解明にも着手している。
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今後の研究の推進方策 |
DDX41の発現もしくは機能の障害がR-loopを蓄積させる機序を明らかにするため、細胞周期を同調した細胞において、特定の細胞周期においてDDX41を阻害する実験の実施を計画している。また、ロングリードシーケンサーによるRNAスプライシング変化の解析を実施するとともに、転写伸長複合体とDDX41との機能的な相互作用についても検討を進める予定である。
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