研究実績の概要 |
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、最も頻度の高い悪性リンパ腫でありながら、約5割の患者が亡くなっており、これら難治性DLBCLの治療法開発は急務である。癌原遺伝子であるc-MYC(MYC)の過剰発現や変異を有するMYC関連DLBCLは、難治性DLBCLの多くを占めるが、MYC自体に対する創薬は困難とされている。そこで本課題では、大規模な臨床検体の解析を通じて、MYC関連DLBCLに対する新たな治療戦略を創出することを目的に研究を実施した。MYC自体に対する治療開発が難しい理由として、同遺伝子が正常細胞を含め多くの細胞において、多数の遺伝子(報告によっては1/3)の制御に関与しているため、想定される有害事象が大きいことが挙げられる。そこで、我々はMYC自体ではなく、MYCの制御下においてDLBCLの増殖に不可欠な働きをする分子の同定を試みた。 まず、多数の患者検体を用いた網羅的遺伝子発現解析によって、臨床的予後が不良な患者で高発現している遺伝子を抽出した。その中で、MYCと発現の相関が強い代謝関連分子を同定した。同分子はMYCによってその発現を制御されており、さらにin vitro, in vivoの系において、DLBCLに対する高い治療効果を示した。本研究は、難治性DLBCLに対する新たな標的治療の有効性、実現可能性を検証したものであり、MYC関連DLBCLに対する新規治療法の可能性を示したものである。
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