研究実績の概要 |
1.造血幹細胞の成熟化マーカーの探索 自身、および公共データベースのRNA-seqデータの解析およびqPCRの解析からMuc13,Spns3, Cpne2, Ndrg1が成熟に伴い上昇することを確認し、かつ上昇のタイミングがそれぞれ異なることを見出した。Muc13, Spns3が出生後4週間以内の早期に上昇するのに対し、Ndrg1は8週齢程度になるとはじめて加齢することがわかり、造血幹細胞の成熟過程は単相性ではなく複相的に進行することを示唆した。 2.胎生期造血幹細胞の成熟化誘導因子の探索と成熟メカニズムの解明 各種の培養条件や転写因子の過剰発現を通じて成熟化誘導因子を探索した結果、間葉系細胞株との共培養系において、骨髄環境を模倣する形で胎児造血幹細胞を成熟させかつ長期間維持可能となった。この間にMuc13, Spns3、Cpne2は生体内同様、時間経過とともに徐々に発現が亢進する一方で、特定の因子によって発現が変動するわけではなく外在性の因子ではなく造血幹細胞自身の有する内在性のプログラムが成熟過程に関わっていることが示唆された。一方、Ndrg1は生体内と異なり100日を超える長期の培養後も発現が亢進せず、共培養系から、脂質リッチな成体造血幹細胞用の培養環境に移すことで発現するようになることから、微小環境によって発現が制御されることが示唆された。 3. 遺伝子機能解析のための遺伝子編集技術の開発 マウスの造血幹細胞についてCRISPR/Cas9システムを用いて様々な条件を検討し、ノックアウト効率の最適化を試みた。具体的には高サイトカイン条件で16-24時間のprecultureを経た後、sgRNA+Cas9 complexを導入し、ただちに上記の造血幹細胞静止期維持培養を開始することで、10日間にわたり生着可能な造血幹細胞を維持した(Cell Rep Methods, 2022)
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