研究実績の概要 |
① 胎児型造血幹細胞と成体型造血幹細胞の環境応答性の相違の解明 成体型造血幹細胞マーカーは各種培養条件で様々な変化をし、早期成熟マーカーであるCpne2については長期間培養可能な間葉系細胞との共培養系においては生体内に類似した緩徐な成熟過程をとる(図1)。一方、4週齢以降に発現上昇する後期成熟マーカーNdrg1の発現要因は不明であったが、間葉系細胞との共培養から、非共培養下で、静止期維持培養(Cell Rep. 2019)に戻すことで発現誘導が見られ、内在性のプログラムではなく、間葉系細胞由来の因子が造血幹細胞の成熟過程の一部分を抑制していることがわかった。 ② 胎児型造血幹細胞の長期培養法による体外成熟化誘導 胎児型造血幹細胞の培養期間を500日以上にまで延長しても大きな形質変化をさせずに培養させることが可能となっている。 ③ 胎生期造血幹細胞の成熟・静止期獲得因子の同定と効果の検証 胎児造血幹細胞を培養可能な間葉系細胞と維持不可能な間葉系細胞との違いを検証するため、8種類の間葉系細胞株について造血幹細胞の維持能を比較し、それぞれの細胞株をRNA-seqに供した。その中で、造血幹細胞の維持能と高い相関を示す遺伝子を複数同定した。これらの遺伝子について過剰発現系を用いて、造血幹細胞非維持細胞が造血幹細胞維持可能細胞に変化するかどうかを検証している段階である。また、造血幹細胞側の成熟因子を検討するために、間葉系細胞共培養系において造血幹細胞の維持が不可能になる阻害剤のスクリーニングを行った。いくつかの阻害剤によって間葉系細胞の維持能が失われたことから、これら阻害剤のターゲットが造血幹細胞の維持・成熟に関わっていると推測された。このほか、造血幹細胞の遺伝子編集の改良とその応用について論文報告を行った(STAR protocols. 2023, Exp Hematol. 2023)
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