研究課題
本研究開始前に実施した日本人集団における初のANCA関連血管炎(AAV)のゲノムワイド関連研究(GWAS)において、小さなサンプルサイズから得られた予備的な知見を、本研究において追加試料の解析とメタアナリシスにより確認し、ゲノムワイド有意水準に到達する疾患関連バリアントを見いだすこと、GWASでは解析困難なバリアントをターゲット遺伝子解析で見出すこと、重要な合併症である間質性肺疾患(ILD)合併等、臨床所見と関連するバリアントを見いだすことなどを目的として研究を進めている。2021年度は、日本人集団におけるsecond GWASを施行するために、新たな研究参加者のリクルートを行った。この過程で、新たな連携研究機関の参加が得られ、倫理委員会への変更申請申請を行い、承認が得られた。現在、試料と臨床情報の収集を進めており、2021年度内に予定していたsecond GWASの実施は、追加試料とあわせて、2022年度に実施することとした。また、first GWASのデータに基づき、日本人AAV群においてILD合併に関連する候補領域の探索を行った。サンプルサイズは限られるものの、P<1x10-4の関連傾向を示す複数の染色体領域が新規に見いだされ、これらを対象に、独立の試料を用いた関連解析を開始した。さらに、ヨーロッパ系集団において好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)のGWASが報告されたことを受け、日本人集団におけるEGPAの検討を行った。HLA領域においては、ヨーロッパ系集団同様、HLA-DRB1*07:01の関連が検出されたのに加え、HLA-DRB1*09:01の関連が検出された。また、TSLP遺伝子の関連が、日本人集団EGPAにおいても検出された。HLAの関連は主としてMPO-ANCA陽性EGPA群において検出されたのに対し、TSLPの関連はEGPA全体で観察された。
3: やや遅れている
2021年度内に新たな連携研究機関の参加が決まり、2022年度には、当初の予定よりも多くの試料をGWASで解析しうる可能性が高くなった。解析結果の検出力と信頼性を高めるため、すべての試料を同時に解析することとし、2021年度内に予定されていたGWASの実施を2022年度に延期することにした。また、新型コロナウイルス感染症による間接的影響により、連携臨床機関における試料・臨床情報の収集、連携研究機関における次世代シークエンス解析などに、若干の遅れが生じている。
新たな連携研究機関からの試料を含め、2022年度後半にsecond GWASを実施し、2023年度にかけて、first GWASの候補領域の関連の確認を行うとともに、first GWASとのメタアナリシスにより、ゲノムワイド有意水準に到達する、AAVの疾患感受性およびILD合併関連バリアントを見いだす計画である。並行して、候補遺伝子領域のシークエンス等により、GWASでは検出が困難なバリアントの解析を行う。2023年度には、GWASにより検出された候補領域のfine mapping、候補バリアントの機能予測・機能解析を行うとともに、日本人AAV発症およびILD合併に関するpolygenic risk scoreの算出とその意義の評価を行う。
2021年度中に、新たな連携研究機関が研究に参加し、2022年度には、当初予定されていた以上の試料を対象にしたsecond GWASを行うことが可能な見通しとなった。そこで、検出力と信頼性を高めるために、当初2021年度内に計画していたゲノムワイド関連研究の実施を、サンプルサイズを増やした形で、2022年度内に実施する計画に変更した。このため、2021年度のゲノムワイド関連研究のために予定していた資金を、2022年度の解析用に予定していた資金にあわせて、2022年度内にゲノムワイド関連研究を実施する計画に変更した。並行して施行する予定のターゲット遺伝子のシークエンス解析については、予定通り実施する。
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