研究課題
2022年度は、ポストGWAS研究の一環として、すでにMPO-ANCA陽性血管炎(MPO-AAV)の発症との関連を報告したHLA-class IIについて、病因的アリルを検討するとともに、寛解後の再燃リスクとの関連を検討した。発症との関連では、中国人集団においてMPO-AAVとの関連が報告されたHLA-DQA1*03:02が日本人集団においても有意に関連することが検出されたが、DRB1*09:01-DQB1*03:03ハプロタイプと強い連鎖不平衡にあり、いずれが一義的な発症関連アリルかの決定は困難であった。現時点では、DRB1*09:01-DQA1*03:02-DQB1*03:03を発症リスクハプロタイプと考えるのが妥当と結論した。寛解後の再燃リスクとの関連では、発症リスク同様、DRB1*09:01-DQA1*03:02-DQB1*03:03が関連する傾向が見出された。一方、HLA-DR分子のβ鎖 position 13にSerを有するアリル(DRβ1_13S)を保有すると再燃に抵抗性であることが見出された。そこで、再燃リスクに関連するDQA1*03:02と再燃抵抗性に関連するDRβ1_13Sの有無によって患者群を4群に分けて生存曲線解析を行ったところ、DQA1*03:02陽性かつDRβ1_13S 陰性群では、DQA1*03:02陰性かつDRβ1_13S陽性群と比較して、ハザード比4.02(95% 信頼区間 1.39-11.6)で有意に再燃リスクが高いことが明らかになった。また、新たなゲノムワイド関連研究(second GWAS)の対象となるANCA関連血管炎(AAV)患者試料と臨床情報の収集を行った。合計で約200検体に到達したが、受託解析先が当初の計画から変更になったことに伴い、変更倫理申請等に時間を要したため、GWASは2023年度に施行することとなった。
2: おおむね順調に進展している
MPO-AAVの再燃リスクとHLAとの関連に関して新たな知見が得られ、2022年度内に英文原著論文として出版することができたことから、概ね順調に進展していると判断する。一方、ゲノムワイド関連研究(GWAS)については、症例のリクルートは順調に進行したものの、当初予定されていた受託解析先に、価格の上昇、納期が遅いことなどの問題が生じ、さらに研究上の必要性からも、受託解析先の変更が必要となった。研究代表施設ならびに共同研究施設を含めて、変更倫理審査が必要となったため、GWASは当初の予定より遅れ、2023年度に施行することとなった。
受託解析先の変更に関する変更倫理審査が研究代表施設および共同研究施設で承認され次第、当初の計画通り、ゲノムワイド関連研究を施行し、MPO-AAV発症関連バリアントおよび間質性肺疾患合併関連バリアントの解析を進める。
当初の計画では、受託解析によるゲノムワイド関連解析(GWAS)を2022年度に予定し、そのための経費を計上していたが、受託解析先の価格の上昇、納期が遅いこと、さらに、研究上の必要性により、受託解析先を変更することとなった。これに伴い、研究代表施設および研究分担施設において、変更倫理申請が必要となり、かなりの時間を要したため、GWASを2023年度に一括して行うこととした。このために、2022年度に予定されていた受託解析用の経費を、2023年度に繰り越して使用することとなった。2023年度、変更倫理申請の承認がおり次第、GWASの受託解析を進める計画である。
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