研究実績の概要 |
アレルゲン免疫療法は疾患自然史を修飾可能な治療法であるが、約、2、3割の患者には効果を示さない。その原因を検討するため、本研究ではアレルギー性鼻炎合併の喘息患者を対象にダニ舌下免疫療法(SLIT)を2年間実施し、症状、治療スコアを継時的に評価し、両スコアの有意な改善を認めた症例を反応群、不変または悪化を認めた群を非反応群として評価。両群の免疫学的差異があるかを検討するため、末梢血の濾胞ヘルパーおよび制御性T(cTfh、cTfr)細胞、制御性T(cTreg)細胞および制御性B(cBreg)細胞をFACSで解析、ダニ抗原(Der-p/f)特異的IgE、IgG4、IgGをELISAにて測定し、両群間の差異を検討した。また、これらの免疫学的所見を用い、統計学的に治療予測性とバイオマーカーについて検討した。 反応群ではcTfh2細胞は治療一年経過で有意に低下、cTfh1細胞は有意に増加した。cTfh2細胞への偏移は改善。Der-p/f IgEは3ヶ月後に一過性に上昇後、以後継続的に低下し、両群で有意差はなかった。Der-p/f IgG4,IgGは反応群で継続的に増加し、非反応群より有意に高値であった。 一方、cTreg細胞およびcTfr細胞はcTfh2細胞と6ヶ月および一年後において有意に負の相関を認めた。 治療前と2年後のcTfh細胞の細胞内IL-4とIFN-gの発現を検討したところ、有意にIL-4の発現低下とIFN-gの発現上昇を認めた。これらの結果より、ダニSLITによりTh2反応の是正もしくはTh2反応が抑制されているのが確認できた。 この結果より治療前に本治療の反応性を予測する免疫学的指標がないか、反応群と非反応群の間で統計学的に多因子ロジスティック解析にて検討した。その結果、cTfh2/cTfr細胞およびcTfh2/cBreg細胞比が有意な指標として同定された。
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