研究課題/領域番号 |
21K08445
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
杣 知行 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (40307921)
|
研究分担者 |
永田 真 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (20211443)
小林 威仁 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (90618266)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 血清IL-36 / 喘息 / 喀痰中好酸球比率 / 喀痰中好中球比率 |
研究実績の概要 |
本研究は、IL-1 ファミリーに帰属するIL-36 サブファミリーによる、喘息病態への修飾作用を解明することが主題である。IL-36 サブファミリーは、ケラチノサイトや気道上皮、樹状細胞などが由来で、その活性型はIL-1βやTNF-α、CXCL1などの産生に寄与している。尋常性乾癬の皮膚や喫煙者の気管支肺胞洗浄中濃度の増加が報告されているが、気管支喘息病態への影響は明らかにされていない。 本年は安定期成人喘息患者85名および健常人30名を集積し測定解析を行った。健常人に比較し喘息患者では血清IL-36αが高値を示した(p=0.03)。一方アンタゴニスト機能を有するIL-36Rα、IL-38は差を認めなかった。次にERS/ATS重症喘息ガイドラインに基づく重症喘息32名と非重症53名を比較検討した。血清IL-36αは健常人に比較し重症喘息で高値を示した(p=0.009)。また血清IL-36α/IL-36RαおよびIL-36α/ IL-38も同様の結果を認めた。さらに血清IL-36α/ IL-38は非重症喘息も健常者より高値を示した。以上の結果から、IL-36は喘息の全身性炎症に関与していることが示唆され、IL-36RαやIL-38とのバランスが喘息ではより影響することが推測された。今回の結果を踏まえ、IL-36が全身性に喘息病態に関与している傍証が見出されたことは重要であり、気道病態への関与と炎症細胞への作用を検討していく根拠をとなる点で意義が深い。 さらにIL-36の気道炎症への影響を検討するために、健常者と喘息患者の喀痰中顆粒球細胞分布を検証した。現時点の本研究症例と保存症例の重症喘息では、喀痰中好酸球比率2.7%、喀痰中好中球比率50%をカットオフ値とし、FeNO、末梢血好酸球数の2基準を活用した重症喘息フェノタイプにおける気道炎症型エンドタイプの分布を報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は喘息患者の血清IL-36を測定し、重症度による相違やアンタゴニストであるIL-36Rα、IL-38とのバランスによる相違を見出した。また喀痰中顆粒球分布の検証を行い、気道中IL-36との関連エフェクター細胞や、好酸球優位型や好中球優位型喘息などの気道炎症エンドタイプ別によるIL-36の相違を検討するための基盤を形成した。現在喀痰中IL-36の測定を開始しており症例集積過程にある。 本年度は喘息気道中IL-36存在を病理的アプローチで検討することを計画していた。喘息におけるIL-36産生細胞の同定と呼吸器疾患に関する既存の知見との相同性を検証することを目的としていた。喀痰に関する免疫染色は既存の報告を参考に方法を検討しているが、実行には至っていない。 喘息におけるIL-36のエフェクター機能を検討することを目的として、細胞実験を計画している。上記のごとく喘息での増加を見出せたことから、研究の推進となる根拠が確立された。以後さらに進めていく。 今年度は臨床的アプローチが進展し、以降の研究の足がかりができたことを考察し、研究の進展度は概ね良好と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、IL-36による喘息患者の全身性免疫応答への関与を示唆する結果を得られた。本事象に対して、症状や呼吸機能などの臨床的パラメーターとの関連性から喘息の全身性炎症への影響に関して解析を進めていく。またtype1およびtype 2炎症の両面からサイトカイン、ケモカイン他、報告されているメディエーターを測定し、IL-36との関連性を検討していく。 本年度は喀痰中顆粒球分布の検証を行った。喀痰中IL-36の測定を進め喘息患者における事象を検討し、喀痰中顆粒球との関連性やどの顆粒球優位型において有意な変化が観察されるかを解析していく。炎症進展メカニズムにおけるIL-36の機能に関して喀痰中各種メディエーターを測定し、血中メディエーターと同様に関連性を検討していく。また本年度滞った喀痰中IL-36の産生細胞を病理学的に特定することを進めていく。検出が困難な場合には気道組織を活用した検討や遺伝子発現の検出を計画する。 IL-36のエフェクター機能に関しては、末梢血中好酸球や好中球のエフェクター機能に対する修飾を、私たちの研究室の伝統的手法で進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は症例の集積に時間を費やした。解析可能な症例数を獲得し、血清IL-36測定にて有意義な結果を得ることができた。現在喀痰IL-36測定を開始している状況にある。このためIL-36関連の測定に資金を使用したが、予定金額に達せずに本年度は終了している。 次年度はほかのサイトカイン、ケモカイン、メディエーターを測定予定にあり、現在購入中にある。また細胞実験を予定しており、それに必要な試薬を購入予定にある。
|