研究課題
Signal-transducing adaptor protein-1(以下、STAP-1)は免疫細胞に高発現しているSTAPファミリーアダプタータンパク質である。我々は、様々な免疫応答に対するSTAP-1の機能的役割をの解明に取り組んでいるが、アレルギー反応に対するSTAP-1の役割は不明であるため、本研究ではマスト細胞IgEシグナルに対するSTAP-1の機能を解明することを目的として研究を行う。昨年度、申請者はSTAP-1がIgEシグナルのネガティブレギュレーターである可能性を示した。本年度は、その可能性を確実のものとし、作用機序の解明に取り組んだ。野生型およびSTAP-1欠損マウスから骨髄由来培養マスト細胞(BMMC)を樹立し、IgE感作後に抗原刺激したところ、TNFaやIL-6、さらにIL-13 mRNA発現が野生型BMMCと比較し、STAP-1欠損BMMCで増強傾向であった。さらにこれらサイトカインのタンパク質量をELISA法で測定したところ、STAP-1欠損BMMCで有意に増加していた。次に、IgEシグナル伝達に対するSTAP-1の寄与を調べるため、ウエスタンブロット法でIgEシグナル伝達関連のリン酸化変化を調べた。その結果、抗原刺激後のAkt、p38およびERKのリン酸化の亢進がSTAP-1欠損BMMCで観察された。以上の結果から、STAP-1はマスト細胞でIgEシグナルを負に制御することでサイトカイン産生を抑制することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
昨年度、STAP-1がマスト細胞分化に関わらないことを明らかとし、本年度はSTAP-1のIgE依存性マスト細胞活性化に対する機能的役割についても明らかにできた。また、その作用機序にも現在取り組んでおり、興味深い結果が得られつつあり、次年度の実施により、STAP-1がどのような機序を介してIgEシグナルを制御しているかが明らかになりつつあることが理由である。
本年度の研究成果から、STAP-1がIgEマスト細胞活性化反応を抑制することが明らかになった。今後はその作用機序の解明を行い、なぜSTAP-1がサイトカイン産生を抑制するのかについて明らかにする予定である。またin vivoでも同様の作用が見られるかについても検討する予定である。一方で、マスト細胞では他の免疫細胞と異なり、STAP-1のプロテアーゼ依存的な翻訳後切断が起こっている。この作用機序についても解析する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
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