研究課題/領域番号 |
21K08452
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤井 博司 東北大学, 大学病院, 准教授 (30531321)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 全身性エリテマトーデス / 形質芽細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、末梢血形質芽細胞におけるSLE患者と健常人間での発現変動遺伝子(in vivoマイクロアレイ)とBCRのみの刺激とBCR+TLR9の共刺激間での発現変動遺伝子(in vitroマイクロアレイ)の比較に基づき、共通に上昇している遺伝子抽出し、それらの分子を特異的に標的する方法を開発(薬剤の探索)し、最終的にSLE形質細胞を特異的に標的とする治療法の開発につなげる。 今年度の研究では、通常のB細胞刺激である抗BCR抗体+CD40Lと病的B細胞(自己反応性B細胞)刺激を想定した抗BCR抗体+CpG(TLR9のリガンド)あるいは抗BCR抗体+R848 (TLR7/8のリガンド)の遺伝子発現をRT-PCRで定量し、in vivoマイクロアレイと比較した。当初は抗BCR抗体+CpG+IFNαによる刺激がもっともin vivoでのSLE形質細胞に特異的な遺伝子変化を反映すると考えていたが、CDC7、MEF2BなどのSLE形質細胞において特異的に上昇している遺伝子は抗BCR抗体+R848+IFNαによる刺激において特異的に上昇していた。また、CDC7阻害薬TAK-931が抗BCR抗体+R848+IFNαにより誘導される細胞分裂を著明に抑制した。来年度以降、抗BCR抗体+R848による刺激をSLEにおける病的B細胞が受ける刺激のprototypeとして特異的な遺伝子発現、分化、機能解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、in vitroにおける病原性B細胞の活性化モデルを樹立することを目的としてきた。In vivoにおける病原性B細胞(=抗RNA-タンパク複合体B細胞)が受けるであろうシグナルはBCRとTLR7のdual-engagementであるが、それらを引き起こす抗BCR抗体+R848とIFNαにより誘導される遺伝子はSLE患者由来の形質芽細胞で特異的に遺伝子群に含まれていたことを確認し、このin vitroの系が病原性B細胞の活性化モデルとして妥当であると考えられ、初年度の目的を十分達成したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年後の実験については、抗BCR抗体+CD40L、抗BCR抗体+CpG、抗BCR抗体+R848で刺激されたB細胞について、遺伝子発現をマイクロアレイにて解析する。また、細胞分裂に伴う形質芽細胞、形質細胞への分化をCD38, CD138をマーカーとして解析する。予備実験にてCDC7の阻害薬であるTAK-931が刺激B細胞の分裂を抑制することを見出しているが、TAK-931がin vitroにおける形質細胞への分化を抑制するかどうかについて検証する。併行して既報であるイミキモド(TLR7/8のリガンド)塗布によるループスモデルマウスを樹立し、TAK-931の投与による発症抑制、治療効果を検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品納品の遅延によって生じたものである。令和4年度請求額と合わせて、物品の納品に必要な経費として使用する予定である。
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