研究課題/領域番号 |
21K08455
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
下島 恭弘 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (50436896)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ANCA関連血管炎 / SIRT1 / BAFF / APRIL / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
ANCA関連血管炎(AAV)患者の末梢血単核球(PBMCs)を用いた研究。アンチエイジング蛋白であるサーチュイン遺伝子(SIRT1)を賦活化して、CD14陽性細胞から産生されるBAFF、APRILおよびAAV関連病態因子(活性酸素(ROS)や炎症性サイトカイン)の変化に関して検証実験を行った。2021年度は、PBMCsをリポポリサッカライド(LPS)で刺激培養した後に、①CD14陽性細胞内に発現するSirt1、BAFF、APRIL、ROS、IL-1β、IL-6、TNFαをFACSで測定。また、②磁気細胞分離キットを用いてCD14細胞を分離後、①の各因子をmRNAレベルで測定。①②ともに健常コントロール(HC)と比較するとともに、各因子とSIRT1との相関関係を解析。以下の結果が得られた。 ①HCに比してSIRT1の発現は低く、BAFF、APRIL、ROS、IL-1β、IL-6およびTNFαの発現は高値であった。②HCに比してSIRT1の発現は低い傾向であったが、mRNAレベルでその他の各因子との差は証明されなかった。③SIRT1との統計学的相関性は証明されなかった。 また、④別途、①の実験はレスベラトロール(RVL)添加あり・なしのLPS培養液で培養した細胞でも比較を行った。概要は以下の通りである。 ④-1) RVL添加培養後、ROSは有意に発現が抑制されたのに対し、BAFF、APRIL、IL-1β、IL-6およびTNFαの発現はHCに比して高いままだった。④-2) BAFFに関しては、RVL未添加で培養したものに比して更に発現が亢進する傾向を示した。ROSとBAFF以外、他の測定因子ではRVLあり・なしで差は示されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部、次年度の研究計画に含んでいた実験も遂行した経過だが、統計学的処理ができるほどのデータ蓄積までには至っていない。結果的には、2022年度に計画した研究から得られるデータは予定通りのスケジュールで蓄積できる運びである。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、SIRT1の遺伝子形質移入実験を開始する。PBMCsから磁気細胞分離キットを用いてCD14細胞を分離後、エレクトロポレーション法でCD14陽性細胞にSIRT1を形質移入しLPSで刺激培養。その後、BAFFおよびAPRILの細胞内発現の測定はFACSで行い、検体数を増やして統計学的解析を行う。また、形質移入後のCD14陽性細胞からtotal RNAを抽出。qRT-PCRを用いて、SIRT1、BAFFおよびAPRILをmRNAレベルで測定するが、前述FACSで得られたデータをもとに、適宜、関連因子の測定を追加する。2023年度は、SIRT1の活性化薬剤を用いたBAFFおよびAPRILの発現抑制実験を計画していたが、RVLで仮説と異なる結果が示されており、形質移入実験から同様の結果となった場合には、実験計画を変更することも考慮する。すなわち、BAFFの発現を活性化させるシグナル関連因子の探索的研究を行い、治療標的の同定を目的とした実験とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画で見込んでいたよりも安価で研究が進められたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、2022年度の請求額と合わせて消耗品費として使用する予定である。また論文投稿費としても計上する予定である。
|
備考 |
医療タイムズ(2022年1月20日板)へのプレスリリース(レスベラトロールの制御性T細胞への研究成果報告)
|