D-グルコースのC-3位エピマーである希少糖D-アロースの自然免疫細胞に対する作用を解析した。 マウス骨髄細胞をFlt-3L存在下で培養して得た樹状細胞から、形質細胞様樹状細胞(pDC)を単離して用いた。pDCは、TLR7あるいはTLR9刺激により、サイトカイン(IFN-αおよびIL-12p40)を産生する。このサイトカイン産生が、培地に加えるD-アロース濃度に依存して低下することを発見した。マウス脾臓から単離したpDCでも、D-アロースの効果が認められた。また、TLR刺激により生じるCD86発現の亢進も、D-アロースによって減弱した。一方、他の自然免疫細胞ではD-アロースによるサイトカイン産生の抑制は見られなかった。 pDCのシグナル伝達分子を解析した結果、TLR刺激によるMAPKのリン酸化はD-アロース存在下で減弱した。一方、NF-kBp65のリン酸化は減弱しなかった。MAPKシグナルの阻害がサイトカン産生低下の原因になるか検討した結果、p38 MAPK阻害剤がpDCのサイトカイン産生を抑制することを認めた。D-アロースによるp38 MAPKシグナルの抑制メカニズム解明は今後の課題である。 D-アロースによるpDCの代謝変化を細胞外フラックスアナライザーで解析した。D-アロース存在下では解糖系が強く抑制され、かつ、ミトコンドリアの酸素消費速度が約20%低下した。また、pDC内のATP量は、D-アロース存在下で経時的に減少した。D-アロースによるpDC機能抑制の一因に、ATP量の低下が考えられた。 マウスの耳にR848を塗布することでSLE病態モデルを作成した。本モデルにD-アロースを投与すると、血清中の抗2本鎖DNA抗体価が低下する傾向を示した。マウス個体数を増やして再検討が必用であるが、D-アロースはSLEモデルの病態に対し保護的に働くと考えられた。
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