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2022 年度 実施状況報告書

関節リウマチの病態を担う炎症性破骨細胞のシングルセル解析と同定

研究課題

研究課題/領域番号 21K08464
研究機関埼玉医科大学

研究代表者

横田 和浩  埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (20406440)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード関節リウマチ / 関節破壊 / 破骨細胞 / 破骨細胞分化誘導因子(RANKL) / 炎症性サイトカイン / 細胞内シグナル伝達経路 / ヤヌスキナーゼ阻害薬
研究実績の概要

関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)における多発性関節炎による進行性の関節破壊は、主に炎症性サイトカインが関与している。研究代表者は、RA患者の末梢血単球を炎症性サイトカイン(腫瘍壊死因子:TNF-αとインターロイキン-6:IL-6)で刺激・培養することにより、TNF-αとIL-6誘導性破骨細胞が分化することを世界で初めて報告した。
本研究の目的は、研究代表者が同定した新規の炎症性破骨細胞と従来の破骨細胞の相違を明らかにし、炎症性破骨細胞の機能と関節リウマチにおける病的意義を解明することである。当初、炎症性破骨細胞および破骨細胞の分化におけるエピジェネティクス制御の解明についての検討を開始したが、ヒト末梢血からの単球分離では解析するために必要な細胞数が得られないこと、全細胞解析では各培養細胞群が不均一な細胞集団であることから、再現性のある結果が得られず、実験を断念せざるを得ない状況であった。
一方、RAの新規治療薬としては、2013年から分子標的薬(細胞内シグナル伝達経路阻害薬):ヤヌスキナーゼ(Janus kinase:JAK)阻害薬が使用されるようになった。しかし、JAK阻害薬の関節破壊抑制の機序は不明な点が多く、炎症性破骨細胞および破骨細胞の分化誘導能および転写因子への影響については知られていなかった。そこで、研究代表者はRA患者の末梢血から単球を分離し、炎症性破骨細胞と破骨細胞へ分化誘導させる際に生理学的な濃度(10~500 nM)のJAK阻害薬を同時に添加し、炎症性破骨細胞および破骨細胞への分化誘導能に対する影響を調べた。その結果、JAK阻害薬は、RA患者末梢血単球からの炎症性破骨細胞への分化を濃度依存性に抑制したが、破骨細胞への分化を抑制しないことが明らかになった。
このことからJAK阻害薬の関節破壊抑制機序の1つには、従来の破骨細胞ではなく、新規の炎症性破骨細胞への分化抑制作用が関与している可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初、炎症性破骨細胞および破骨細胞の分化におけるエピジェネティクス制御の解明する研究計画であった。しかし、ヒト末梢血からの単球分離では解析するために必要な細胞数が得られないこと、全細胞解析では各培養細胞群が不均一な細胞集団であることから、再現性のある結果が得られず、実験を断念せざるを得ない状況であった。
また、研究代表者が所属する機関である埼玉医科大学病院は感染症指定病院であり、新型コロナウイルス感染症のパンデミック禍において、埼玉県北西部から最も多くの重症新型コロナウイルス感染者を受け入れている。研究代表者は、令和4年度においても同大学病院のCOVID-19患者の診療に日夜奔走した。その一方で大変残念なことに研究に費やす時間が失われてしまい、当初の計画以上に進展することが出来なかった。

今後の研究の推進方策

令和3年度の研究計画であるシングルセル解析の結果、多くの候補遺伝子を同定し、最も特異的な遺伝子「Gene X」を同定した。しかし、これ以外にも重要な遺伝子が存在する可能性を秘めており、候補遺伝子の絞り込みを継続して実施する。また、炎症性破骨細胞における「Gene X」の蛋白発現について、蛍光免疫染色法のみならず、western blotting法やELISA法(培養上清)での確認を継続する。そして、健常人のみならず、関節リウマチ患者の末梢血単球から分化した破骨細胞における「Gene X」の発現について、比較検討・解析を継続する。さらに「Gene X」の誘導因子(例えば、炎症性サイトカイン、ケモカイン、成長因子など)を見出す。
そして、令和4年度の研究からJAK阻害薬での炎症性破骨細胞に対する分化抑制作用が明らかとなった。この作用機序を転写因子制御の観点から解明し、炎症性破骨細胞の制御機構を明らかにする。
それらの結果を踏まえて、最終的にはRA患者の関節破壊部位における炎症性破骨細胞の存在を明らかにし、この細胞を標的とした新規治療薬の開発へと繋げることを目標とする。

次年度使用額が生じた理由

(次年度使用額が生じた理由)
当初の実験計画では、研究経費において、消耗品であるChIP-Seq キット、ATAC-Seqキット、siRNAで使用予定であった。しかし、再現性のある結果が得られず、実験を断念せざるを得ない状況であった。また、新型コロナウイルスのパンデミックの為、国内および国際学会の発表が現地参加ではなく、Web参加となった。このことから旅費を使う機会が完全に失われてしまった。
(使用計画)
新型コロナウイルス感染症に対するWHOからの緊急事態宣言が解除され、重症新型コロナウイルス感染症診療が軽減となることが期待出来る。このことから実験への専念および国内および国際学会への現地への参加・発表の機会を得ることで次年度使用額を活用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] Interleukin-6 Induces Osteoblastic Differentiation in Human Peripheral Blood Mononuclear Cells.2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Yokota, Yoshimi Aizaki, Shinya Tanaka, Hiroshi Kajiyama, Yasuto Araki, Yuho Kadono, Hiromi Oda, Toshihide Mimura
    • 学会等名
      第66回日本リウマチ学会総会・学術集
  • [学会発表] Characteristics of Tumor Necrosis Factor-alpha and Interleukin-6-Induced Osteoclasts in Peripheral Blood and Bone Tissue from Patients with Rheumatoid Arthritis2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Yokota, Miyoko Sekikawa, Shinya Tanaka, Yoshimi Aizaki, Yuho Kadono, Hiromi Oda, and Toshihide Mimura
    • 学会等名
      European League Against Rheumatism 2022
  • [学会発表] 関節リウマチ患者の末梢血と骨組織におけるTNF-αとIL-6誘導性破骨細胞の特徴2022

    • 著者名/発表者名
      横田 和浩、関川 三四子、田中 伸哉、相崎 良美、門野 夕峰、 織田 弘美、秋山 雄次、三村 俊英
    • 学会等名
      第50回日本臨床免疫学会総会

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公開日: 2023-12-25  

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