研究課題/領域番号 |
21K08466
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
長瀬 洋之 帝京大学, 医学部, 教授 (40365945)
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研究分担者 |
杉本 直也 帝京大学, 医学部, 助教 (40724175)
小林 このみ 帝京大学, 医学部, 助手 (70800118)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 好酸球 / アセチルコリン / ムスカリン受容体 |
研究実績の概要 |
気管支喘息管理は、吸入ステロイド薬 (ICS)の普及に伴い、向上してきているが、いまだに重症患者は2万人以上存在し、病態の理解に基づく治療開発のニーズは、引き続き高い。気道炎症の病態メカニズムにおいて、自律神経系と免疫系の間に種々のクロストークが存在することが明らかになりつつある。副交感神経細胞はアセチルコリン (Ach)を分泌し、気道平滑筋を収縮させる。臨床的には、長時間作用性抗コリン薬 (LAMA)は気管支喘息においても気管支拡張作用を示し、その使用が可能となっている。我々は、以前LAMAの喘息モデルに及ぼす効果を検討したところ、気道過敏性が改善するとともに、肺局所の好酸球性気道炎症も減弱していることを見出した。さらに、喘息死検体では、神経終末近傍に好酸球が集積していることが観察されており、Achを含めた神経系と好酸球性炎症の関連が示唆されてはいた。しかしながら、Ach による、直接的な好酸球活性化の有無や、神経終末への集積機構は全く不明であった。 そこで我々は、副交感神経由来のAchが、直接好酸球を活性化する可能性を考えて、in vitroで検討したところ、Achが濃度依存的に好酸球生存を延長することを見出した。これまで、Achによる好酸球の機能的活性化については、全く報告されておらず、本研究では、喘息病態での神経系-免疫系クロストークにおける好酸球の役割について、特にAchにフォーカスしてその全貌を明らかにすることを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度 1. Achは好酸球遊走を惹起し、好酸球の接着分子CD11b発現を増強した: Achは濃度依存性に好酸球遊走を惹起した。細胞遊走形態は、ケモカイネーシスではなく、一方向性のケモタキシスであることも確認した。また、Achは濃度依存的にCD11b発現を増強した。Achはムスカリン受容体の非特異的なアゴニストであるが、M1、M3受容体の選択的アゴニストであるピロカルピンも、同様に接着分子発現を調節した。Achは好酸球脱顆粒 (EDN)は惹起しなかった 2. Ach による好酸球の機能的活性化は、M3受容体が媒介していた: Achによる好酸球生存延長は、M3Rアンタゴニスト (4DAMP)で有意に抑制されたが、ニコチン性Ach受容体 (nAchR)アンタゴニスト (メカミラミン)では、抑制されなかった。また、nAchRアゴニスト (DMPP)は、生存を延長せず、Achによる好酸球活性化には、M3受容体が関与することが明らかとなった。M3受容体は、臨床適用されているLAMAの作用点であり、治療的観点からも興味深い知見である。 3. Ach の受容体である、M1~M5のムスカリン受容体発現をreal-time PCRで検討し、他の臓器での発現と比較した。好酸球では、M3Rを含め、M1~M5受容体mRNA発現は、脳組織や腸菅と比較して、量的には少なかった。 4. 2022年度には、Ach による好酸球活性化における網羅的トランスクリプトーム解析を行った。Achと、最強の好酸球活性化因子である IL-5によるmRNA 発現変化を、 RNAseqを用いて検討した。AchはIL-5とは全く異なるmRNA 発現調節を惹起することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
1. RNAseqを用いて見出したAchとIL-5によるmRNA 発現変化について、発現が強く、刺激後に変化量が大きい分子について、さらにreal-time PCRで検証する。機能的活性化を生じる分子についてはその阻害実験を計画し、Ach刺激後の、2次的な好酸球活性化機構を明らかにする。 2. 2型サイトカインとAchの好酸球活性化における相互作用 (2022年度): IL-5などの2型サイトカインの機能を、Achが増強するかどうか、またAchが2型サイトカインの機能を増強するかどうかを検討する。 3. 交感神経系と好酸球との機能的連関の探索的検討 (2022-23年度): 交感神経からはノルアドレナリン (NA) が分泌され、気管支平滑筋弛緩作用を示すとともに、ILC2 機能を抑制することが報告されているが、好酸球機能にいかなる影響を及ぼすかは不明である。NA による好酸球の直接的活性化、あるいは IL-5 による生存延長などに対する機能抑制の双方の観点から検討する。 4. ヒトにおける抗コリン薬使用前後の好酸球性気道炎症の検討 (2022-23年度) : LAMAは喘息に対して保険適応となっている。 LAMA 未使用の患者において、その吸入前後で喀痰好酸球比率や、喀痰 ECP濃度測定を試み、ヒトにおけるAch阻害が、好酸球性炎症に及ぼす効果について検討する。 5. 喘息患者と健常人由来の末梢血好酸球のAch 反応性や受容体発現の比較 : 喘息患者と健常人由来好酸球のAchに対する反応性の差異や、M3R受容体発現を比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用した消耗品の請求にタイムラグがあったため、今後消耗品に充当する予定である。
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