研究課題
次世代シークエンサーを用いた腸内細菌叢のメタゲノム解析による、高安動脈炎における腸内細菌叢異常の解析を前年度に引き続き進めた。検体数を高安動脈炎患者31例に増やし、糞便検体よりDNAを抽出し精製、次世代シークエンサーを用いて、16S rDNA V3・4領域のシークエンスを行った。続いて、シークエンス解析を行い、Ribosomal database project (RDP)による帰属分類群の推定を行った。高安動脈炎患者では、年齢や性別をマッチさせた健常人に比べて有意な腸内細菌叢の多様性の低下が認められた。腸内細菌叢の分布は、健常人の分布と異なり、門レベルから属レベルでの差異が検出された。Linear discriminant analysis (LDA)の閾値を>2.0とした場合、Streptococcus、 Veillonella、Lactobacillus、Enterococcusの増加と、Bacteroides、Phascolarctobacterium、Parasutterella、Doreaの減少を認めた。特にStreptococcus、 Veillonellaの増加と、Doreaの減少は、同時に発表された中国の論文でも共通しており、高安動脈炎の背景に存在する腸内細菌叢異常である可能性が考慮された。また、Streptococcusによる感染性心内膜炎を発症した患者においてStreptococcusの増加を伴う腸内細菌叢異常を認め、腸内細菌叢異常による、疾患そのものに加え、合併症への寄与が示唆された。また、抗EPCR抗体の病的意義の解析を目標とし、消化管検体を用いた病理標本での解析を行っている。特に腸管でEPCRの発現を認める細胞を同定し、それらの細胞ごとにおける、EPCRの機能と、抗EPCRの病的能の解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
高安動脈炎における腸内細菌叢異常を明らかにすることができ、高安動脈炎の病態に限らず、合併症に対する寄与が考慮された。潰瘍性大腸炎検体の収集と、抗EPCR抗体活性測定を行い、再現性をもって潰瘍性大腸炎において抗EPCR抗体が出現する事が確認された。
高安動脈炎において、健常人との腸内細菌叢の差異を明らかにしたが、他大型血管炎である巨細胞性動脈炎の検体数を増やし、血管炎間での差異を検討する予定である。また、潰瘍性大腸炎において抗EPCR抗体が出現する事から、腸内細菌叢異常によるB細胞の病的活性化が推察される。高安動脈炎において、腸内細菌叢異常がどのように血管炎症に関与するのかについての検討を進めたい。また、腸管炎症性病態におけるEPCRの関与や、抗EPCR抗体がどのような病的能を有しているのかを解明したい。
既存試薬を使用する事が可能であったこと、コロナウイルス感染症により旅費が使用されなかったため、次年度使用額が生じた。次年度はこれまでの研究成果を国際学会含め発表する予定である。
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