研究課題/領域番号 |
21K08470
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川崎 綾 筑波大学, 医学医療系, 助教 (30532816)
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研究分担者 |
河野 肇 帝京大学, 医学部, 教授 (60585074)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 全身性エリテマトーデス / NCF1 / 疾患感受性遺伝子 / SNV |
研究実績の概要 |
NOX2複合体の構成因子の1つであるNCF1は、主に好中球に発現し活性酸素の産生に関わっている。NCF1遺伝子のアミノ酸置換を伴うバリアント(Arg90His)は、全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患発症リスクと関連している。本研究では、NCF1遺伝子全域を対象とした解析により新たなSLE関連バリアントの同定を試みる。 NCF1にはゲノム配列の大部分が一致する偽遺伝子(NCF1B, NCF1C)が存在するため、NCF1遺伝子領域のゲノム解析は非常に困難となっている。本年度はNCF1および偽遺伝子の正確な塩基配列の決定、NCF1特異的配列の特定を目的として、ロングリードシークエンサー(PacBio Sequel)を用いてNCF1、NCF1B、NCF1C遺伝子全長(約16kb)のシークエンス解析を実施した。得られた結果から、NCF1、NCF1B、NCF1C間の塩基配列の相同性が非常に高い(99%)ことが確認できた。今回のデータと、データベースに登録されているヒトのリファレンス配列(hg38)を比較したところ、NCF1のイントロン領域に30塩基の挿入があることがわかった。またリファレンス配列から予測されたNCF1遺伝子特異的配列の一部は、バリアント部位であることがわかった。これらの結果から、ロングリードシークエンス解析によりNCF1、NCF1B、NCF1C遺伝子配列の取得が可能であることが確認できた。今後、複数サンプルを用いたロングリードシークエンス解析によるNCF1バリアントの同定と、NCF1バリアントとSLEの関連解析を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NCF1遺伝子と偽遺伝子の配列の相同性が非常に高く、シークエンシングにより得られた配列がどの遺伝子に由来する配列か区別することまではできたが、各遺伝子内のバリアントの検出が困難であり、現在も解析法を検討中である。そのため複数サンプルの解析まで行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きNCF1のロングリードシークエンス解析によるバリアント検出法の構築を試みる。その後、複数サンプルについてロングリードシークエンシングを行いNCF1バリアントの検出、NCF1遺伝子特異的配列の特定を行う。NCF1遺伝子特異的配列をもとに、ショートリードシークエンサーによるNCF1遺伝子解析法を構築する。その解析法を用いて多数のSLE患者サンプルのシークエンシングを行い、SLE関連バリアントを検出する。さらに独立のサンプルについてリアルタイムPCR法等による関連バリアントの遺伝型タイピングを行い、再現研究を行う。 NCF1と同様にNOX2複合体構成遺伝子であるNCF2やNCF4遺伝子等を対象とした関連解析を実施し、NOX2複合体構成遺伝子群のSLE疾患感受性への寄与を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ロングリードシークエンス解析法の構築に時間がかかったため、その後に予定していた複数サンプルのロングリードシークエンス解析に至らなかった。またショートリードシークエンス解析も条件検討までしか行えなかった。これらの理由により、シークエンス用試薬購入費が当初の予定より少なくなり次年度使用額が生じた。
2021年度にシークエンス解析用に使用予定であった研究費と2022年度の研究費を合わせて、ロングリードおよびショートリードシークエンス解析を実施する。さらに、ほかのNOX2 複合体構成遺伝子のゲノム解析も実施する。
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