研究課題
本研究では申請者が先行研究で見出した、NF-κBを抑制するリード化合物群をもとに、炎症性疾患の動物モデルを用い、発症予防の検討を行うとともに、リード化合物からの新規化合物の合成、ターゲット分子の同定、作用メカニズム解明を目指して実施した。2023年度はリード化合物の溶解性やマウスでの体内動態を検討した。化合物はリン酸緩衝生理食塩水には難溶であったが、修飾シクロデキストリンであるSulfobutylether-β-Cyclodextrin (SBE-β-CD)の20%溶媒を用いることで溶解性が得られた。また、マウスの腹腔内投与後の血中濃度をLC-MS/MSで定量したところ、化合物は投与後15分で速やかに循環血漿中に到達し、24時間後には5%程度まで減少することが分かった。キナーゼターゲットを検討するために、5uMの濃度でキナーゼ阻害アッセイを行ったところ、P38とErk2に軽度の阻害活性を有していることが分かった。また、動物モデルの解析をすすめたところ、リード化合物は急性および慢性関節炎の動物モデルでいずれの関節炎にも有効で、関節炎を軽減したほか、骨破壊、軟骨破壊を抑制し、炎症細胞浸潤も抑制していた。また、慢性関節炎のモデルでは、リード化合物投与マウスに由来する免疫細胞では、抗原に刺激による細胞増殖とインターフェロンγ産生が抑制されていたほか、所属リンパ節の樹状細胞が減少していたことが分かった。このとき、特異抗体の産生は抑制されていなかった。今後の研究では、リード化合物が標的としている分子を同定して、化合物のNF-κBの抑制作用メカニズムの解析を行う見込みである。
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