研究実績の概要 |
予備的実験からJAK3のエンドソーム局在化が、エンドソームの酸性pH依存的に生じる結果を得ている。本年度はまず、エンドソームの酸性化阻害がJAK3シグナルに及ぼす影響について精査した。末梢血単核球をそれぞれ作用機序の異なるエンドソーム酸性化阻害薬存在下でサイトカイン刺激し、下流シグナルを確認した。その結果全てのエンドソーム酸性化阻害薬は、JAK3を介するIL-2,IL-7,IL-15のシグナルを阻害した。一方JAK3を介さないIL-6,IL-10,IFNa,IFNgシグナルには影響を与えなかった。続いてこれらエンドソーム酸性化阻害薬が、サイトカイン依存性の細胞増殖に与える影響について検討した。IL-3依存性の増殖を示すBa/F3細胞にIL-2Rb,IL-4Ra,IL-7Raをそれぞれ導入し、各種エンドソーム酸性化阻害薬存在下でIL-3またはIL-2,IL-4,IL-7で刺激し増殖を確認した。その結果、全てのエンドソーム酸性化阻害薬がIL-2,IL-4,IL-7依存性の細胞増殖を選択的に抑制することを確認した。続いてJAK3の酸性pH依存的なエンドソーム局在化メカニズムについて検討した。酸性pH依存的なエンドソーム局在化メカニズムとして、FYVEドメインとPI3Pの結合が知られている。この結合には亜鉛イオンが必須であることから、キレート剤であるEDTA存在下での細胞分画を行いJAK3のエンドソーム局在におけるFYVEドメインの関与について確認した。その結果、EDTA濃度依存的なJAK3の膜からの解離が確認され、JAK3のエンドソーム局在化にFYVEドメインタンパク質が関与する可能性が示唆された。
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