研究課題/領域番号 |
21K08475
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
秋月 修治 京都大学, 医学研究科, 助教 (50626637)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / ホスホリパーゼD4 |
研究実績の概要 |
研究項目②:ヒト検体を用いたPLD4の意義の解明と臨床応用への可能性の検証 A. 血漿中遊離型PLD4の定量 サンドイッチELISAによる遊離型PLD4の定量法の樹立を試みている。具体的にはELISA用プレートに市販のポリクローナル抗ヒトPLD4抗体(Abcam社、ab179938)を固相化し、合成ヒトPLD4タンパク(MYBioSource社)を段階希釈し添加した。遊離型PLD4の検出のため異なるポリクローナル抗ヒトPLD4抗体(GeneTex社、GTX87031)を添加の後に、HRP標識2次抗体を加え、ELISAプレートリーダーにより検量線を作成した。次に健常人、及び全身性自己免疫疾患患者(全身性エリテマトーデス、関節リウマチ)の血漿を検体とし検討を行ったが、両群間で量的差異は確認されなかった。他方で、血漿検体での検量線の再現性が低く、ELISA系の検証が必要であると考えられた。 B. 患者末梢血単核球におけるPLD4発現プロファイルの計測 健常者、及び全身性自己免疫疾患患者の末梢血単核球細胞をCD3+T細胞、CD19+B細胞、CD16+単球、CD11c+樹状細胞をセルソーター(BD FACSMelogyTM)により分取のうえ、各細胞亜分画におけるPLD4のトランスクリプトを定量PCR法(SYBR Green)により計測した。結果、PLD4のトランスクリプトはB細胞、単球で高発現する一方で、T細胞、樹状細胞では検出感度以下であった。また、健常者、及び全身性自己免疫疾患患者の比較において両群間に発現量の差異は確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究項目①:PLD4による免疫寛容の維持機構の解明 A. PLD4変異マウス、B細胞特異的 PLD4 欠損マウスの解析、B. PLD4によるB細胞受容体シグナル(BCR)伝達の制御の可能性 細胞系譜毎のPLD4分子機能解析を目的に、理化学研究所と共同研究で作出したPLD4ノックアウトマウス(Pld4flox/flox)とをB細胞系譜特異的Cre発現マウス(Mb1-Cre)と交配し得られたB細胞特異的 PLD4 欠損マウス(Pld4flox/flox-Mb1-Cre)を解析した。プレリミナルな検討において同マウスで胚中心B細胞の増加、Tfh細胞の数的増加が観察された。他方で、全身細胞でPLD4が欠損するマウス個体がコロニーに混入することが確認された。原因として生殖細胞系列でCre レコンビナーゼ蛋白が発現することが既報にあり、安定したB細胞特異的PLD4欠損マウスの解析の障壁となっている。従って、本研究項目の進捗は予定より遅れており、今後はCD-19 Creマウス等の他系統との交配を予定している。 研究項目②:ヒト検体を用いたPLD4の意義の解明と臨床応用への可能性の検証 血漿中遊離型PLD4の定量系の確立に関しては、実測するヒト血漿検体における定量性が未熟であり、サンドイッチELISA法の条件変更が必要である。ヒト自己免疫疾患患者の末梢血中免疫細胞のPLD4トランスクリプトの定量系は確立しており、今後、計測検体を増やし健常者との差異を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
血漿中遊離型PLD4に関する研究項目については、ELISA系の非特異シグナルの軽減のため、ポリクローナル抗ヒトPLD4抗体の固相化濃度の調整、抗体種の変更、由来動物種の変更を行う。ヒト自己免疫疾患患者の末梢血中免疫細胞のPLD4トランスクリプトの定量系は確立しており、今後、計測検体を増やし健常者との差異を検討する。また、臨床情報と照合し、疾患特徴との関連について検討を行う。また、B細胞特異的PLD4欠損マウスの解析は、CD-19 Creマウス等の他系統との交配を今後予定している。
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