ホスホリパーゼD4(PLD4)は関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症の疾患感受性遺伝子である。PLD4は細胞内エンドソームに局在するエキソヌクレアーゼであり、小胞内DNA、RNA分解を介してトール様受容体7、9(TLR7、TLR9)の経路を負に制御することが既知である。他方で公知データベースは、ヒト血漿中に細胞外PLD4が既知の細胞外ヌクレアーゼDNASE1、DNASE2に比して高濃度に存在することを示唆する。細胞外核酸の代謝異常は全身性自己免疫疾患の病態形成の一因である。そのため、2022年度に続き、膜貫通領域を欠くPLD4の可溶型を検出し、その細胞外ヌクレアーゼとしての機能確認と臨床意義の探索を試みた。2022年度は可溶型PLD4の定量を目的に抗PLD4ポリクローナル抗体をELISAプレートに固相化し、大腸菌の発現系で取得したリコンビナントPLD4を標準とした結果、定量的に計測された。他方でヒト血漿検体では段階希釈法で定量性が確認されなかった。原因とし、使用した抗ヒトPLD4抗体が哺乳類細胞由来PLD4を認識しない可能性を挙げた。そのため、PLD4を遺伝子導入したHEK293Tの細胞溶解液を用いウェスタンブロットを実施の結果、抗ヒトPLD4抗体と哺乳動物細胞発現PLD4に反応性が確認された。そこで、使用した抗体が3次構造を保持するPLD4を検出しうるか検証するため、膜貫通領域を欠損した可溶型ヒトPLD4を作出しELISA系の陽性対照とした。結果、ウェスタンブロット法で抗ヒトPLD4ポリクローナル抗体で検出された一方で、ELISA系では確認されなかった。そのため、ELISA系の用いた抗体がネーティブフォームPLD4と反応性を有さないと判断した。現在、ELISA系で用いる抗体種を変更し、引き続いて可溶型PLD4の定量系樹立に向けて検討を継続中である。
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