研究課題/領域番号 |
21K08478
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
倉沢 和宏 獨協医科大学, 医学部, 教授 (30282479)
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研究分担者 |
有馬 雅史 獨協医科大学, 医学部, 教授 (00202763)
大和田 高義 獨協医科大学, 医学部, 講師 (30456016)
田中 彩絵 獨協医科大学, 医学部, 助教 (30743067)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 間質性肺炎 / 皮膚筋炎 |
研究実績の概要 |
膠原病に伴う肺疾患は生命予後という点から重要な合併症である.特に抗MDA5抗体陽性の急速進行性間質性肺炎(RP-ILD)に代表される膠原病合併難治性肺炎は予後不良であり,その治療法は確立していない.その病態にマクロファージの活性化が関与する可能性が報告されているが,その発症メカニズムは十分に解明されていない.本研究ではマクロファージにおける2本鎖RNA編集酵素ADAR1に注目し,膠原病合併RP-ILDにおけるADAR1機能異常の病理学的意義を明らかにする.本研究は,ADAR1をマクロファージ特異的に欠損させたLys-ADAR1-cKOマウスを利用して実施された.いままでの解析結果を以下に示す.(1)実験的自己免疫疾患モデルとしてToll-like receptor(TLR)7の刺激薬剤であるImiquimodの経皮的投与により誘導される自己免疫疾患モデルを作製.血清中抗dsDNA抗体は野生型とcKOマウスで検出されたが,有意差を認めなかった.(2)自己免疫疾患モデル成立後にTLR7刺激剤であるResiquimodとPolyI:Cを同時に経気道的に投与.病理学解析では野生型マウスに比較してcKOマウスでマクロファージ,好中球,リンパ球含む炎症細胞浸潤の増加を認めた.(3) コラゲナーゼ処理による肺由来の分散細胞についてFACS法による解析.WTと比べてcKOマウスにおいて好中球,CD44+CD4+T細胞(メモリーT細胞),ILC3細胞,NK細胞,およびマクロファージサブセットの中で単球由来肺胞マクロファージの増加を認めた.(4)cKOマウスにおいて血清中に約60~70%の陽性率で抗MDA5抗体がELISA法で検出された.以上よりマクロファージ細胞内のADARの低下は自己免疫疾患のILDの増悪病態を誘導する可能性が考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子改変マウスの産出が予想より少なかったため,解析に使用するマウスの確保が困難であった.そのためマイクロアレイ解析が実施困難であった.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は劇症型ILDの基盤的分子病態メカニズムの探索的解明を目的として各マウスのILDモデルの肺より各肺マクロファージ(肺胞・間質)を純化抽出し,RNAシークエンス法で解析し,細胞特異的な発現変動遺伝子のプロファイル解析とパスウエイ解析および遺伝子・細胞レベルでクラスタリング解析を行う.以上の解析データの統合的な多変量解析により,マクロファージのADAR1が直接・間接的に産生調節するmicroRNAやmRNAを探索し,肺炎の難治化・劇症化関連遺伝子の発現の特徴を明らかにしてマクロファージやADAR1の病理的意義を推定する.
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