研究課題
成人スティル病は発熱、関節炎、皮疹を三主徴とする原因不明の炎症性疾患である。自己免疫現象ではなく、マクロファージや好中球を主体とした自然免疫系の異常活性化が病態と考えられている。活動性ASDで最も重症化病態で致命的となりうるのは、マクロファージ活性化症候群であるが、通常成人スティル病におけるマクロファージ活性化の相違は明らかでない。病態としては連続性のある事象と捉えられる反面、臨床的重症度は明確に異なり、病態の相違を明らかとすることは必須である。本研究ではASDにおけるマクロファージ活性化症候群の病態解明とマクロファージ活性化度の定量化および発症予防可能な分子標的同定を目的としている。本年はまず成人スティル病と健常人から血清を収集し、自律的炎症およびマクロファージ活性化における責任分子同定に向けて網羅的プロテオーム解析を行った。活動期成人スティル病24名(うちマクロファージ活性化症候群2名)、非活動期40名および健常人19名の血清をProximity Extension Assay (PEA)法を用いて合計354蛋白を解析した。FC>2、FDR<0.05を有意と定義し、活動期成人スティル病と健常人の比較で51蛋白が、活動期成人スティル病と非活動期成人スティル病の比較で25蛋白の有意に高発現蛋白しており、オーバーラップする高発現蛋白として22個が抽出された。これらはIFNγ、CCL7、CCL20、CXCL9/10/11、IL18、S100A12タンパクなどマクロファージ遊走と活性化、好中球活性化に関連する分子に加え、新規分子が複数同定された。今後はこれら分子に着目し、同時並行で進めているMass cytometryによりimmunophenotypingと細胞内染色によって、これら分子の主要産生細胞の同定とマクロファージ活性化カスケードの同定を目指す。
3: やや遅れている
マクロファージ活性化症候群を含む活動期成人スティル病の血清収集が想定よりも遅延したこと、およびmass cytometryの染色分子と金属の最適な組み合わせおよび細胞透過処理プロトコール確立に時間を要したことが挙げられる。また、プロテオミクス結果から、細胞内染色分子の入れ替えを行うったことも前向きな要素ではあるものの遅延の一因である。やや進捗に遅れが認められたことに伴って、本年度の血液解析の個数が減少したことにより、次年度に繰越となった。次年度には患者登録促進が進むことが見込まれるため、次年度での解析に使用予定。
患者血清および細胞集積をさらに継続する。Mass cytometryによる末梢血リンパ球サブセットと細胞内蛋白発現解析やプロテオミクス結果の、疾患活動性や治療などで層別化した詳細なバイオインフォマティクス解析を追加し、マクロファージ活性化カスケードの同定と定量化式確立を目指す。
やや進捗に遅れが認められたことに伴って、本年度の血液解析の個数が減少したことにより、次年度に繰越となった。患者血清および細胞集積をさらに継続し、次年度には患者登録促進が進むことが見込まれるため、次年度での解析に使用予定。
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Clin Exp Rheumatol
巻: 39 ページ: 631 and 638