感染に対する生体防御の第一線において、自然免疫による炎症反応は重要な役割を果たしている。一方自然免疫による急性炎症反応の対象は病原体に限局されるものではないため、感染局所に遊走した白血球の活性酸素やプロテアーゼなどの分解酵素などが漏れだして自らの組織傷害をも引き起こす。生体内における通常以上の細胞死、特にネクローシスは急性炎症反応を引き起こす。虚血などの感染を伴わない細胞死においては、 急性炎症は組織傷害のみ引き起こし、様々な炎症性疾患の原因となると考えられている。全身性エリテマトーデス(SLE)においては、紫外線暴露により皮膚障害が惹起される(細胞死が誘導される)と、皮膚所見のみならず全身的なSLE疾患活動性の増悪につながることが経験されており、細胞死に対する炎症反応がSLEの病態形成に重要であることが想定される。SLEは全身性自己免疫疾患の代表的存在であり、その抗核抗体を代表とする核抗原に対する自己抗体とともに、自己反応性T細胞についての研究が進展してきた。その一方、近年、SLEの病態における自然免疫細胞と分子の重要性も明らかとなってきたが、その歴史は浅く、理解も十分ではない。
SLEにおける自然免疫メカニズムとして重要と考えられているのは好中球のNETosisによる好中球由来の細胞外トラップ(NETs)産生である。NETosisは、抗菌タンパク質でコーティングされた脱凝縮クロマチンの細胞外への放出を伴う細胞死であり、NETsにより病原体が捕捉され処理される機構である。SLEではNETosisの亢進、NETsの分解の障害が報告されているが、その分子メカニズムは十分理解されていない。我々は、予備的なSLEにおけるヒドロキシクロロキンの作用機序の探索の網羅的解析(RNAシークエンス)において、好中球のアポトーシスと関連するミトコンドリアの機能を制御する分子の有意な遺伝子発現の変動を同定した
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