研究課題
2021年度には、ダニ粗抗原に応答してT細胞IL-5産生が誘導され、吸入負荷で遅発型喘息反応が認められる症例の末梢血単核球を、当該抗原で刺激し、限界希釈法により、T細胞クローンを樹立した。動物モデル樹立の目的には、卵白アルブミン(OVA)特異的T細胞受容体トランスジェニックマウスより、T細胞クローンを複数樹立し、これらのT細胞クローンを固相化抗CD3抗体で活性化し、上清中のサイトカイン産生を特異的ELISAで測定した。培養ヒトあるいはマウス気管支平滑筋細胞を、24 well plate内でコラーゲンゲルに封入し、6日間培養後に収縮活性のアッセイに用いた。マウスでは各々のT細胞クローンを無処置マウスに移入し、抗原チャレンジ後、無拘束呼吸機能解析装置(BUXCO)を用いてPenh(enhanced pause)値を、また麻酔下、レスピレータ装着下に呼吸機能測定装置(BUXCO社)を用いて、呼吸抵抗(RL)値を測定した。実験喘息モデルでの抗原特異的遅発型喘息反応(in vivo)と、in vitroでのT細胞クローン培養上清中の気管支平滑筋収縮活性の関連について解析した。活性化に伴い気管支平滑筋収縮活性を産生するT細胞クローンを複数樹立できたので、上清を大量に作成し、濃縮、保存した。収縮活性の精製を目指し、ゲル濾過、イオン交換により分画し、平滑筋収縮活性を評価した。2022年度には、平滑筋収縮活性の高いクローンと平滑筋収縮活性のないクローンとの間で、遺伝子発現解析、生化学的精製、プロテオーム解析を実施し、候補分子の絞り込みを試みた。さらに、候補分子については、リコンビナント体の作成、中和抗体実験を開始した。
2: おおむね順調に進展している
2022年度までに予定していた4項目のうち、①IgE非依存性、T細胞依存性の遅発型喘息反応のcharacterization、新規気管支平滑筋収縮物質の同定 ― 非アトピー型喘息症例末梢血Tリンパ球、T細胞クローンの培養、培養ヒト気管支平滑筋細胞のゲル内収縮実験、②生化学的精製、ジーンチップ解析、③T細胞依存性マウス気管支閉塞モデルの解析、④ 平滑筋収縮候補分子の発現、アッセイ(中和含む)、モノクローナル抗体作成、が概ね順調に進行し、最終年度への進展につながる成果が比較的順調に得られた。
2021年度に開始、2022年度に継続した研究項目のうち、②、③、④ を継続する。加えて、最終年度においては、④ 平滑筋収縮候補分子の発現、アッセイ(中和含む)、モノクローナル抗体作成に重点を置いて、研究項目②、③の結果絞り込まれた候補分子について、リコンビナント体を作成し、臨床検査診断薬開発に向けたモノクローナル抗体作成を展開したい。
研究計画当初予定していた研究項目の②生化学的精製、ジーンチップ、プロテオーム解析において、プロテオーム解析の実験条件についての詳細な検討を進めている段階で、実際に本実験を実施する際に必要となる試薬については、次年度に購入するため、約38万円使用しなかった。
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