研究課題/領域番号 |
21K08491
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
土肥 直哉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (80754217)
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研究分担者 |
野間口 雅子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (80452647)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | HIV-1 / HIV-2 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
PIMキナーゼは、転写や細胞周期などを調節する種々の分子を基質としており、細胞の増殖や分化に関与する。PIMキナーゼは、PIM1、PIM2、PIM3に分類され、各PIMが発現している細胞や組織が異なることが知られている。これまでに、学内の共同研究により、PIMキナーゼ阻害剤(PIM阻害剤)のHIV複製抑制効果を調べた結果、ある種のPIM阻害剤がHIVタイプ特異的に作用することを見出していた。PIM阻害剤#2は、HIV-2特異的に感染価を増強し、#5は、HIV-1特異的に感染価を低下させる。今年度は、まず、定量PCRにより、これらのPIM阻害剤がインテグレーションされたゲノム量に影響していない、つまり、PIM阻害剤によるHIVタイプ特異的な感染価の変動が、複製前期過程への影響によるものではないことを確認した。PIMがHIV-1/HIV-2の遺伝子発現に及ぼす影響を調べた結果、ある種のPIMは、HIVタイプに依存的に遺伝子発現を増減させることが分かった。PIMとレトロウイルス複製との関連に関していくつかの報告があるが、この結果は、PIMがHIVの遺伝子発現に対してHIVタイプ特異的に影響を及ぼし得ることを示している。HIV-1とHIV-2とは、地域分布や病態進行などで違いがあるが、その要因については未解明な点が多い。PIMがHIVタイプ特異的に及ぼす影響を調べることにより、HIVタイプ間の違いを生じる要因の解明に繋がると期待される。また、PIM阻害剤による、HIV複製抑制にも貢献できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、PIM阻害剤を使用し、そのHIVタイプ特異的な感染価変動の機構を調べることを予定していた。しかし、PIM阻害剤の作用点やPIM阻害剤によるキナーゼ活性の変化は、細胞内の生理環境に対して種々の影響を及ぼすと予測されたため、PIMの発現自体がHIV-1/HIV-2の遺伝子発現に与える影響を調べることにした。この方針転換により、PIMとHIV-1/HIV-2遺伝子発現との関連を明確にすることができた。新たな実験系において、各PIMによるHIV遺伝子発現に及ぼす影響に違いがあること、また、PIMがHIVタイプ特異的に遺伝子発現を増減させることが分かり、HIV-1とHIV-2の複製や病原性の違いに関与し得る要因を解明できる可能性が示された。PIMキナーゼ阻害剤で得られたデータと、今年度に得られたPIMによる遺伝子発現への影響に関しては、これらの整合性についてさらに解析していく必要がある。しかし、PIMが何らかの形でHIVタイプ特異的に遺伝子発現に影響することは明らかであり、その機構の解析に次年度から注力する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得たPIM阻害剤によるHIVタイプ特異的な感染価の増減と、今年度得られたPIMによるHIVタイプ特異的な遺伝子発現の増減とを繋ぐ機構の解析が重要であると考えられる。現時点で観察している現象が、PIMキナーゼ自体によるものなのか、そのキナーゼ活性によるものなのか、あるいは、PIMが標的とする多彩な基質への影響によるものなのか、を解析していく必要がある。もう一つ重要な視点は、HIVの標的細胞であるCD4陽性T細胞やマクロファージにおいても、PIMの影響が反映されるか否かである。各PIM発現が細胞や組織に対して特異性があり、局在が異なることからも、重要な点になると考えられる。今年度、PIMによるHIVタイプ特異的な影響を解析可能な実験系が構築できたため、まずは、この実験系を用いて、PIM特異的かつHIVタイプ特異的に遺伝子発現に及ぼす影響を解析する。特に、ウイルスの塩基配列および関与し得るウイルスタンパク質に着目して解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に納品され、支払いが4月になったため。
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