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2022 年度 実施状況報告書

腸管オルガノイドのヒトノロウイルス感受性に関与する因子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 21K08496
研究機関北里大学

研究代表者

芳賀 慧  北里大学, 感染制御科学府, 講師 (80528373)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードヒトノロウイルス / 腸管オルガノイド
研究実績の概要

これまでの研究から、腸管細胞の表面に発現している糖鎖抗原がヒトノロウイルスの感染に関与していることが強く示唆されていた。疫学的研究やボランティ ア研究により、この糖鎖抗原にフコースを修飾するフコース転移酵素2(FUT2)遺伝子が機能していないヒトは、ヒトノロウイルス感染に抵抗性があることも知られている。ヒトの腸管オルガノイドを用いたヒトノロウイルスの培養系においても、FUT2遺伝子を欠失させたヒト腸管オルガノイド細胞は、過去に大流行を起こしたヒトノロウイルス_GII.4株に感染抵抗性を示した。 以上より、ヒトノロウイルスに対して腸管オルガノイドが感受性を示す要因が、細胞表面上に発現しているフコース修飾された分子と推測できる。実際にFUT2 を欠損させることで、膜表面へのヒトノロウイルスの結合が減少する。
そこで本事業では、FUT2遺伝子を欠失させたヒト腸管オルガノイドと通常のヒト腸管オルガノイドを用いて、ヒトノロウイルスのウイルス様粒子(VLP)に結合する細胞膜表面上に発現している分子を比較した。その結果、ヒトノロウイルスのVLPに結合する分子のうち、通常のオルガノイドでのみ見つかったの分子、すなわち感染感受性に関与している可能性が高い候補分子を数種同定することに成功した。これらの同定した分子の遺伝子発現をそれぞれCRISPR/Cas9で欠失させたヒト腸管オルガノイド細胞を樹立することに成功したが、ヒトノロウイルスの感受性は変化しなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

同定した候補分子の発現をCRISPR/Cas9で欠失させることはできたが、ヒトノロウイルスの感受性は変化しなかった。おそらく、フコースが転移される分子は数多く、個々に発現を欠失させてもヒトノロウイルス感受性は変化しないものと思われる。実際に、他の細胞株でもFUT2が発現していて、ヒトノロウイルスが結合するという報告は多々ある。よって、ヒト腸管オルガノイドがヒトノロウイルスに感受性である理由は、他のところにあると考えている。大きく方向転換したため本研究は遅れている。

今後の研究の推進方策

分化させたヒト腸管オルガノイド細胞のうちヒトノロウイルスに対して感受性がある細胞は限られていた。今回新たに、ヒトノロウイルスを感染させたヒト腸管オルガノイド中のウイルスRNA複製が行われた細胞数を調べた結果、当初ウイルスタンパクの発現を観察することで判定していた感染細胞数より相当低かった。
今後は、ウイルスRNAが複製している細胞をスクリーニングして、その細胞に特異的な分子発現を調べ、それら分子とノロウイルス感染感受性との関係を調査する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Generation of CRISPR-Cas9-mediated genetic knockout human intestinal tissue?derived enteroid lines by lentivirus transduction and single-cell cloning2022

    • 著者名/発表者名
      Lin Shih-Ching、Haga Kei、Zeng Xi-Lei、Estes Mary K.
    • 雑誌名

      Nature Protocols

      巻: 17 ページ: 1004~1027

    • DOI

      10.1038/s41596-021-00669-0

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Luciferase‐based quantification of membrane fusion induced by SARS‐CoV‐2 S protein2022

    • 著者名/発表者名
      Haga Kei、Takai‐Todaka Reiko、Sawada Akihito、Katayama Kazuhiko
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 27 ページ: 537~543

    • DOI

      10.1111/gtc.12945

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Genotype-dependent kinetics of enterovirus inactivation by free chlorine and ultraviolet (UV) irradiation2022

    • 著者名/発表者名
      Torii Shotaro、Corre Marie-H?l?ne、Miura Fuminari、Itamochi Masae、Haga Kei、Katayama Kazuhiko、Katayama Hiroyuki、Kohn Tamar
    • 雑誌名

      Water Research

      巻: 220 ページ: 118712~118712

    • DOI

      10.1016/j.watres.2022.118712

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Experimental Adaptation of Murine Norovirus to Calcium Hydroxide2022

    • 著者名/発表者名
      Oishi Wakana、Sato Mikiko、Kubota Kengo、Ishiyama Ryoka、Takai-Todaka Reiko、Haga Kei、Katayama Kazuhiko、Sano Daisuke
    • 雑誌名

      Frontiers in Microbiology

      巻: 13 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fmicb.2022.848439

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Genome wide knockout by CRISPR-Cas9 revealed Human Astrovirus receptor2022

    • 著者名/発表者名
      芳賀 慧
    • 学会等名
      第69回 日本ウイルス学会 学術集会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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