研究課題
ロタウイルス(RV)は小腸上皮細胞を厳格な標的とする腸管指向性ウイルスである。申請者らのグループでは2018年に増殖能がきわめて高いサルRVを人工合成する技術(11-プラスミドシステム)を開発し、2019年に組換えヒトRVの作製に世界に先駆けて成功した。一方でこの技術を用いることで、大きいサイズ(~2.2kb)の外来遺伝子をRVゲノムへ挿入できることも報告した。本研究ではこの11-プラスミドシステムを駆使し、安全性の確保されたRVワクチンRotarix株を用いた腸管指向性ベクターの創出を目指す。今年度は、11-プラスミドシステムによる組換えRotarix株の作製を試みた。Rotarix株の各遺伝子をT7 RNAプロモーター下流に配置した、全11本からなるRotarix株ゲノムをコードするプラスミドセットを構築した。この11本のプラスミドセットをT7 RNAポリメラーゼを恒常発現するBHK/T7細胞に遺伝子導入し、組換えRotarix株の作製を試みた。ヒトRVに由来するRotarix株の増殖性はきわめて低いと予想されたため、胃腸炎患者下痢便中から効率良くRVを分離する際に用いられる方法(高濃度トリプシン添加と回転培養)を11-プラスミドシステムと組み合わせて用いたが、現時点で11 本のゲノム分節のすべてがRotarix cDNA からなる組換えRotarix株の創出に至っていない。本課題をクリアするために、増殖性がきわめて高いサルRV(SA11-L2 株)をバックボーンとして、Rotarix株の遺伝子分節を1本ずつ有する、モノリアソータントパネルの作製を試み、Rotarix株ゲノムをコードする各プラスミドの機能性を検討する。
3: やや遅れている
SA11-L2 株をバックボーンとし、11本のRotarix株の遺伝子分節を1本ずつ有するモノリアソータント株のうち、3種類(NSP1、VP2、VP6 遺伝子)を人工合成することができた。これらモノリアソータント株はポリアクリルアミドゲル電気泳動法によってその遺伝子像が確認できているが、残り8種類については検討中である。
いまだ機能性を確認できていない残る8本の遺伝子についても、モノリアソータント作製を進め、最終的には完全な人工合成Rotarix株の作製につなげる。その一方で、増殖性がきわめて低いRotarix株をより効率よく人工合成するため、11-プラスミドシステムの最適化を行う。
11 本のゲノム分節のすべてがRotarix cDNA からなる組換えRotarix株の創出が予定よりも遅れているため、計画的に次年度使用額として残しました。次年度にこの目的で引き続き使用する予定です。
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Journal of General Virology
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