近年、臨床検体に対してメタゲノム解析を適用し、検体中に存在する微生物を網羅的に明らかにするクリニカルメタゲノミクスが、病原体検出手法として用いられることがある。しかし、臨床検体中に含まれる核酸のうち病原体由来のものは少なく、感度向上、低コスト化が達成できていない。また、データ解析方法はゲノムデータベースに依存した解析手法であるため、ゲノムデータベースに情報が少ない真菌の正確な同定が難しい。真菌感染症は、皮膚のみならず、免疫低下時の呼吸器感染症などで重篤な疾患を引き起こす。真菌感染の検査では、形態観察以外に遺伝子情報を用いた方法として、あらゆる真菌が共通してもつ配列(rRNA)の一部であるITS領域などのシーケンスによって行われている。しかし、これらの手法で同定する範囲では別種であるにもかかわらず同じ配列をもっているなど、精度に問題があり、より正確かつ簡便に真菌を同定できる方法が必要である。そこで本研究では、rRNAの全長をターゲットにすることでより高分解能な真菌の種同定方法を構築することを目的とした。本年度は、真菌感染症が確認されている臨床検体を対象に全長rRNAシーケンスを行い、その感度や実用化の可能性について検討した。
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