hsdS遺伝子組換え膜光透過性固定株を用いた侵襲性肺炎球菌感染症のメカニズム解明

2023 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 21K08506
• 研究機関: 琉球大学
• 研究代表者: 山本 和子 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10398167)
• 研究分担者: 井手口 周平 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター), 呼吸器内科, 医師 (50796224) [辞退] ; 小川 道永 国立感染症研究所, 細菌第一部, 室長 (80361624)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2025-03-31
• キーワード: 肺炎球菌 / 肺炎 / 莢膜

研究実績の概要

肺炎球菌は、肺炎および侵襲性肺炎球菌感染症（IPD）の主要な原因菌であるが、その重篤度や侵襲の機序は未だ解明されていない。肺炎球菌のコロニーは莢膜光透過性のvariantを有し（Opaque型とTransparent型）、動物実験において侵襲性感染（Opaque型）および鼻腔内コロニー形成（Transparent型）と関連していることが示された。本研究では、肺炎球菌コロニーの莢膜光透過性と肺炎球菌性肺炎の臨床像との関連性を評価した。研究は、4つの3次医療機関で2012年から2019年の間に肺炎球菌性肺炎で入院した成人患者を対象とした。下気道検体から得られた肺炎球菌株の血清型と実体顕微鏡でコロニー莢膜光透過性を評価し、肺炎の重症度との関連性を解析した。ムコイドコロニー表現型の血清型3および37は、研究対象から除外した。合計92人の患者を対象とし、多くは高齢者（年齢中央値：72歳）で男性（67％）、59％が市中肺炎であった。92例中、肺炎球菌コロニーにOpaque型、Transparent型、Mix型がそれぞれ41例（45％）、12例（13％）、39例（42％）存在した。Opaque型、Transparent型は、患者背景が異なっていたが、血清型分布に差はなかった。肺炎重症度は２群で差がなかったが、菌血症の発生率はOpaque型で有意に高かった。Opaque型は、ヒトにおいて侵襲性感染症を引き起こす可能性が高いことが示唆された。この研究はIPDの病態解明に役立ち、肺炎球菌コロニーの莢膜光透過性の評価はIPDの予測因子として役立つ可能性がある。本研究成果は、Journal of Medical Microbiology 2024;73:001784.に報告した。共同研究者の国立感染症研究所第一細菌部と協力し、さらに菌株19F型の莢膜変異株を作成している

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

マウスで肺炎球菌肺炎を形成する菌株19F型（EF3030）の莢膜変異株を作成したが、莢膜透過性について安定性に乏しく、遺伝子組み替え法および複数種の菌株を国立感染症研究所と共同で作製している。代表者が2022年10月に琉球大学へ異動し、実験環境の準備のため研究が遅れていたが、まず第１報の論文が受理された。

今後の研究の推進方策

19F型（EF3030）のみならず、複数の血清型菌株を用いて、hsdS組換え株を作製する。莢膜透過性が継代によっても安定した株を用いて、マウス肺炎モデルを作製する。In vitroにおけるhsdS組換え株の微生物学的な病原性の評価（増殖能とバイオフィルム形成能の評価、マクロファージ貪食能、NF-kB誘導能、発現受容体の評価）を行い、さらにIn vivoマウス肺炎モデルでのhsdS組換え株の侵襲性と病原性評価（鼻腔定着率と肺炎への進展率の評価、経気管投与（i.t.）による肺炎モデルの生存率と体重の評価、肺内菌数、菌血症、肺内好中球の遊走、肺内炎症性サイトカインの評価）を行う。

次年度使用額が生じた理由

研究代表者が2022年10月に琉球大学へ異動し、その前後でしばらく研究が滞ったため、研究を完遂するために次年度に繰越を行う。

研究成果

• [雑誌論文] Clinical features relating to pneumococcal colony phase variation in hospitalized adults with pneumonia. (2024)
  • 著者名/発表者名: Ideguchi S, Yamamoto K, Takazono T, Fukuda Y, Tashiro T, Shizukuishi S, Chang B, Ogawa M, Izumikawa K, Yanagihara K, Yatera K, Mukae H.
  • 雑誌名: J Med Microbiol 巻: 73 ページ: 001784
  • DOI: 10.1099/jmm.0.001784.
  • 査読あり
• [雑誌論文] A novel ex vivo lung cancer model based on bioengineered rat lungs. (2023)
  • 著者名/発表者名: Mizoguchi S, Tsuchiya T, Doi R, Obata T, Iwatake M, Hashimoto S, Matsumoto H, Yukawa H, Hayashi H, Li TS, Yamamoto K, Matsumoto K, Miyazaki T, Tomoshige K, Nagayasu T.
  • 雑誌名: Front Bioeng Biotechnol 巻: 11 ページ: 1179830
  • DOI: 10.3389/fbioe.2023.1179830.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Genetic profile of thymic epithelial tumors in the Japanese population: an exploratory study examining potential therapeutic targets. (2023)
  • 著者名/発表者名: Shimada M, Taniguchi H, Yamaguchi H, Gyotoku H, Sasaki D, Kaku N, Senju C, Senju H, Imamura E, Takemoto S, Yamamoto K, Sakamoto N, Obase Y, Tsuchiya T, Fukuda M, Soda H, Ashizawa K, Fukuoka J, Nagayasu T, Yanagihara K, Mukae H.
  • 雑誌名: Transl Lung Cancer Res 巻: 12 ページ: 707-718
  • DOI: 10.21037/tlcr-22-794.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] A high α1-antitrypsin/interleukin-10 ratio predicts bacterial pneumonia in adults with community-acquired pneumonia: a prospective cohort study. (2023)
  • 著者名/発表者名: Miyazaki T, Fukushima K, Hashiguchi K, Ide S, Kobayashi T, Sawai T, Yatera K, Kohno Y, Fukuda Y, Futsuki Y, Matsubara Y, Koga H, Mihara T, Sasaki E, Ashizawa N, Hirayama T, Takazono T, Yamamoto K, Imamura Y, Kaku N, Kosai K, Morinaga Y, Yanagihara K, Mukae H.
  • 雑誌名: Pneumonia (Nathan) 巻: 15 ページ: 16
  • DOI: 10.1186/s41479-023-00118-4.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Effect of voluntary human mobility restrictions on vector-borne diseases during the COVID-19 pandemic in Japan: A descriptive epidemiological study using a national database (2016 to 2021). (2023)
  • 著者名/発表者名: Hibiya K, Shinzato A, Iwata H, Kinjo T, Tateyama M, Yamamoto K, Fujita J.
  • 雑誌名: PLoS One 巻: 18 ページ: e0285107
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0285107.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 細菌叢と免疫 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: 第97回日本感染症学会総会・学術講演会 第71回日本化学療法学会学術集会合同学会
• [学会発表] 肺炎球菌感染症の病態を踏まえた予防戦略. (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: 第63回日本呼吸器学会学術講演会
• [学会発表] 高齢者肺炎のマネジメント (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: 第69回信越支部生涯教育講演会
  • 招待講演
• [学会発表] 肺炎球菌感染症の課題と予防戦略 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: 第97回日本感染症学会総会・学術講演会 第71回日本化学療法学会学術集会合同学会
• [学会発表] 沖縄の環境とウイルス感染症の流行との関係 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: 第76回 日本薬理学会西南部会
  • 招待講演
• [学会発表] 新型コロナウイルス感染症とインフルエンザ 3年間のシーズンを振り返って (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: 第63回日本呼吸器学会学術講演会
• [学会発表] COVID-19治療の変遷とこれからの主役 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: 第76回日本薬理学会西南部会
  • 招待講演
• [学会発表] 生活習慣病と呼吸器感染症.診断、治療、予防のポイント (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: 日本内科学会学術集会 第５１回内科学の展望
  • 招待講演
• [学会発表] 抗酸菌感染症における臨床検査 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: 第70回日本臨床検査医学会学術集会
• [学会発表] Host backgrounds and outcomes associating co-infections with SARS-CoV-2 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: U.S-Japan Cooperative Medical Sciences Program (USJCMSP) International Conference on Emerging Infectious Diseases (EID) in the Pacific Rim, 2023
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Effect of Lactococcus lactis strain plasma (LC-Plasma) on immune response and symptoms in patients with mild COVID-19. Result of the multicenter, double-blinded, randomized controlled trial (PLATEAU study). (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: IDWeek 2023
  • 国際学会
• [学会発表] Bacterial Coinfections in COVID-19 Patients With Acute Respiratory Failure: Japan National Registry Survey. (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: ATS 2023
  • 国際学会
• [学会発表] Efficacy of clarithromycin in patients with mild COVID-19 pneumonia patients: an exploratory, multicenter, open-label, randomized controlled trial. (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 学会等名: APSR 2023
  • 国際学会
• [図書] 昭和学士会雑誌 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 総ページ数: 182
  • 出版者: 昭和大学学士会
• [図書] 医学のあゆみ (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 総ページ数: 128
  • 出版者: 医歯薬出版
• [図書] 今日の治療指針 (2023)
  • 著者名/発表者名: 山本和子
  • 総ページ数: 1440
  • 出版者: 南江堂
  • ISBN: 978-4-524-20768-8
• [産業財産権] 新型コロナウイルス治療剤 (2023)
  • 発明者名: 山本和子、迎 寛
  • 権利者名: 山本和子、迎 寛
  • 産業財産権種類: 特許
  • 産業財産権番号: P286657
  • 外国