研究課題/領域番号 |
21K08511
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
吉野 直人 岩手医科大学, 医学部, 特任准教授 (20372881)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アジュバント / ワクチン / 粘膜免疫 / 抗菌薬 / 食品添加物 / ドラッグリポジショニング |
研究実績の概要 |
現行のインフルエンザワクチンは、インフルエンザの重症化抑制は可能であるが感染防御のための粘膜免疫を誘導できない。ワクチン抗原に対する粘膜免疫の誘導には粘膜アジュバントが必要であるが、臨床使用されているものはない。 我々は抗菌薬であるポリミキシンB(PMB)と食品添加物であるクロシンに粘膜アジュバント作用があることを明らかにしている。しかし、これらのアジュバント単剤の使用では抗体価の有意な上昇は認められたが、ウイルス感染に対する防御は十分ではなかった。 近年、複数のアジュバントを併用することでアジュバント作用が増強されることが明らかになってきている。本研究ではより強い感染防御効果を誘導するため、不活化インフルエンザウイルスにPMBとクロシンを併用したアジュバントを用いて新規経鼻インフルエンザワクチン開発のための基礎的検討を行うことを目的とした。 本研究で重要な点となるのはPMBとクロシンの配合比である。また、これまでの研究により抗原の物理化学的特性(粒子径とζ-電位)が免疫誘導に大きく関与することを明らかにしている。そこで、それぞれアジュバント作用を示す有効濃度(PMB 60mM、クロシン10mM)をもとに、種々の配合比(9:1、8:2、…、2:8、9:1)でPMBとクロシンを混合しモデル抗原として卵白アルブミン(OVA)を用いて形成される粒子直径およびζ-電位を測定した。その結果、7:3、5:5、3:7の配合比が適切な配合比であると想定された。 今年度はこの結果をもとにマウスを用いて免疫実験を行った。抗原をOVAとして想定される配合比とPMB単独、クロシン単独の実験群で経鼻免疫後の抗体価を比較した。7:3、5:5、3:7の配合比の各群の抗体価はPMB単独と有意差はなかった。すなわち、想定した2つのアジュバントの相乗効果は認められず、相加効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物理化学的特性評価およびマウスを用いた免疫学的評価は当初の予定どおりの進捗で結果を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
PMBとクロシンの併用では相乗効果が認められなかったため、全粒子不活化インフルエンザウイルス抗原とこれらの併用アジュバントを用いた実験を取りやめる。クロシンに想定される効果が認められなかった場合、クロシンをスクロースアルキレートに変更することを当初予定として計画していたため、計画通りPMBとスクロースアルキレートの併用アジュバントの物理化学的特性評価および免疫応答の再検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した物品の一部が予算算出時よりも安価になっていたため。
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備考 |
吉野直人:Pandemicにおけるコロナ/HIV感染症ワクチンに関する基礎的考察.医療従事者のためのHIV/AIDS診療に関する研修会.2023年3月
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