研究課題/領域番号 |
21K08512
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
石川 知弘 獨協医科大学, 医学部, 講師 (40609327)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | デングウイルス / 人工miRNAスポンジ / フラビウイルス / 抗ウイルス薬 |
研究実績の概要 |
デングウイルスは熱帯・亜熱帯地域に広く分布する蚊媒介性フラビウイルスである。デング熱やデング出血熱の原因となり、特に重症型のデング出血熱では予後が悪い。毎年、1億例のデング熱、50万例のデング出血熱が発生しているとされ、効果的な抗ウイルス薬の開発が喫緊の課題であるが未だ実用化されていない。本課題は、人工miRNAスポンジを用いた新規抗デングウイルス薬の開発・評価を実施するものである。 昨年度までにデングウイルス2型の増殖に寄与する宿主miRNAを数種同定していたため、本年度はそれらmiRNAが他の血清型のデングウイルス増殖に影響するかどうか解析した。その結果、複数の型のデングウイルスの増殖を促進するmiRNAが同定された。特に昨年度の網羅的解析で同定したmiRNA(miR-Exo-69)は全ての血清型のウイルスに対し増殖促進効果を示した。さらにこれらmiRNAの阻害薬を導入すると、ウイルス複製が抑制されたことから、これらのmiRNAはデングウイルスの複製に必要なmiRNAであることが示され、これらmiRNAを吸収するmiRNAスポンジは抗ウイルス薬となり得ることが考えられる。 人工miRNAスポンジの作製のため、4種のmiRNAを選定した。1つの人工miRNAスポンジにいずれかのmiRNA相補配列を4~6回反復するようデザインしたプラスミドを作製した。現在、4種のプラスミドから、環状人工miRNAスポンジを合成し、その抗デングウイルス効果について直鎖状RNAとの比較・評価を実施しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工miRNAスポンジに用いるmiRNAの選定と人工miRNAスポンジ発現プラスミドの作製までは順調に進めることが出来たが、実際の人工miRNAスポンジの合成過程で、環状化の効率が非常に悪く、その最適化に時間を要しているため。現在は、環状化をガイドする短鎖DNAを導入する予定である。それにより環状化過程が煩雑化するが、結果として収量が改善することを期待している。人工miRNAスポンジ合成の最適化が完了次第、評価を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は人工miRNAスポンジ合成過程を最適化し、得られた人工miRNAスポンジについて各種培養細胞を用いた抗デングウイルス効果について評価を実施する。その際、全4血清型のウイルスを用いて評価を行う。ウイルス産生量による評価に加えて、ルシフェラーゼ発現サブゲノミックレプリコンを用いたRNA複製阻害効果についても評価を実施する。 また、人工miRNAスポンジの細胞への導入方法の最適化のため、RNAトランスフェクション法やエレクトロポレーション法などを用いて比較解析を実施する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
人工miRNAスポンジの合成過程中の環状化反応の効率が想定していたよりも非常に悪く、抗ウイルス作用の評価を実施するのが困難であったため。現在人工miRNAスポンジ合成の最適化を実施しており、完了次第、培養細胞における抗デングウイルス作用について評価を実施する予定である。
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