研究課題/領域番号 |
21K08516
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
佐藤 義則 帝京大学, 医学部, 講師 (90455402)
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研究分担者 |
祖母井 庸之 帝京大学, 医学部, 講師 (10311416)
永川 茂 帝京大学, 医学部, 講師 (50266300)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アシネトバクター・バウマニ / ヒト早発性老化症候群モデルマウス / 日和見感染 / 高齢者 / 免疫応答 |
研究実績の概要 |
高齢宿主におけるAcinetobacter baumanniiの感染は、急速に重症化し致死率も高い。そこで本研究では、老化症状を示すヒト早発性老化症候群モデルマウス(klotho KOマウス)を用いたA. baumannii感染マウスモデルを用いて、高齢宿主におけるA. baumannii感染の重症化メカニズムを明らかにするため、感染免疫応答について解析を続けている。以前に報告したklotho KOマウスの肺の免疫応答が不十分な原因(Sato Y., et al. Front. Immunol., 2020)を明らかにするため、2022年度は遺伝子発現アレイを用いた肺のサイトカイン誘導を網羅的に解析した。当初ターゲットとしていたIL-17は両マウス群とも発現誘導は認められず(検出限界以下)、2021年度に得られた結果と同様であった。このことから、A. baumannii感染におけるIL-17の関与はほとんどないと推測される。一方、A. baumannii感染に伴って誘導されたサイトカイン等の遺伝子発現でWTとKOマウスの間に大きな違いが認められたものは、グランザイムBやIFN-γであった。これらの結果から、高齢者におけるA. baumannii感染では細胞性免疫応答の強弱が重症化に関与することが推測される。その他の遺伝子においてもWTマウスで発現が増加するがKOマウスでは減少するなど、感染後の肺における遺伝子発現の違いが認められている。2022年度に得られた遺伝子発現データからさらにターゲットを絞って解析を行い、高齢宿主におけるA. baumannii感染免疫応答の詳細と重症化の関連を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IL-17は、好中球等の殺菌作用を増強するサイトカインとして知られているが、A. baumannii感染klothoマウスの肺では、IL-17の発現誘導が認められず、遺伝子発現アレイの結果からもIL-17以外の関与が推測された。一方、IFN-γも好中球やマクロファージの活性化などの機能を示すが、klotho KOマウスの肺では、感染後にCD4+T細胞の誘導が認められるもの、IFN-γの発現が誘導されないことが明らかとなっている。さらにグランザイムBの発現に違いがあることが明らかとなり、高齢者では細胞性免疫応答の強弱がA. baumannii感染の重症化を左右すると推測される。
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今後の研究の推進方策 |
概ね当初計画を達成できたが、購入先のklothoマウスの生産体制の変更に伴い、現在マウスの入手が困難となっている。そのため今後は、通常の高齢マウスを用いた解析を予定している。また今回得られた研究結果から、A. baumannii感染に対する高齢マウスと若齢マウスの細胞性免疫応答の違いを明らかにすることで、高齢宿主におけるA. baumannii感染重症化の機序を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入先のマウス生産体制および実験計画の一部に変更があり、klothoマウスの購入が困難であったため計画を変更したことから、次年度使用額が生じた。
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