研究課題/領域番号 |
21K08522
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 圭 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00644808)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝臓 / インスリン |
研究実績の概要 |
我々は肝臓の糖・脂質代謝の変化に起因する肝臓-脳-褐色脂肪組織(BAT)による臓器連関が、個体レベルのエネルギー代謝調節に重要な役割を担っていることを明らかとしてきた。そこで、肝臓選択的・誘導性にインスリン受容体(IR)欠損マウス(iLIRKOマウス)を作製し種々の検討を行った。 興味深いことに、肝臓のIRを欠損させると視床下部のレプチン感受性が低下し、摂食の亢進やBAT熱産生低下による個体レベルのエネルギー消費の減少により体重が増加した。この肝臓-脳-BAT連関の分子機序を解明するために肝臓の遺伝子発現を網羅的に解析したところ、iLIRKOマウスではレプチン受容体(ObR)の発現が著明に上昇していた。肝細胞に発現するObRは、翻訳後修飾により細胞外ドメインが血中へ放出され、可溶性レプチン受容体(sObR)として血中でレプチンと結合し、レプチンのバイオアベイラビリティを減少させうることが知られている。実際、iLIRKOマウスでは血中sObR濃度が上昇しており、視床下部におけるレプチン作用低下を引き起こす候補分子と考えられた。そこでIRとObRを同時に肝臓選択的に欠損させたマウスを作成し解析したところ、iLIRKOマウスで認められた摂食亢進や熱産生低下はほぼキャンセルされ、体重増加も生じなかった。このことから、肝インスリンシグナル低下に起因する視床下部レプチンシグナル低下は、肝臓のObRならびにsObRが担っていることが示唆された。最後に、生理的に肝インスリン作用の減弱が認められる摂食制限下において肝臓のObRおよび血中sObR濃度を検討したところ、両者の増加とBAT熱産生低下が生じることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
iLIRKOマウスで認められた過食、エネルギー消費低下といった代謝表現型が、ObRのさらなる欠損によりどのように影響を受けるかを解析した。iLIRKOマウスで認められた視床下部におけるレプチンシグナルの低下が、ObRのさらなる欠損によりどのように影響を受けるかを解析した。BATの熱産生関連分子の遺伝子発現を定量PCRで比較解析した。BATを支配する交感神経の活性を評価するため、BATノルエピネフリン含量を測定した。iObRKOマウスが給餌した餌を完食するまでの時間を測定した。エネルギー消費、BAT熱産生、BAT交感神経活性などを評価した。制限給餌下の体重や寿命等を解析した。
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今後の研究の推進方策 |
高血糖や体重増加を誘導することが知られている餌(高脂肪食、高ショ糖食など)を野生型マウスに負荷し、血中sObR濃度の推移を検討する。血中sObR濃度上昇を認めた餌をiObRKOマウスに負荷し、摂食、エネルギー消費、BAT熱産生、BAT交感神経活性、体重や寿命などを評価する。
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