1)マクロファージ貪食能,融合能の制御機構解明:マクロファージ貪食能についてより詳細に検討する目的で,様々なマウスから得たマクロファージを用いて貪食能を評価した。その結果,加齢マウス由来マクロファージや1型糖尿病由来マクロファージでは,対照マウス由来マクロファージに比較して,貪食能が低下した。さらに,組織マクロファージの貪食能を検討したところ,高脂肪食負荷マウスの脂肪組織マクロファージは,死細胞添加1日目の急性期の貪食は正常に機能するが,2日目になると貪食能が低下し,持続性が失われていることが分かった。 2)肥満の脂肪組織におけるCLS形成と炎症波及効果の分子機構解明:マクロファージに発現する免疫シグナル伝達分子Xの欠損マウスは,肥満の脂肪組織炎症が減弱することを見出している。脂肪組織間質細胞よりマクロファージをフローサイトメーターで分取し,遺伝子発現を検討したところ,X欠損マクロファージは,野生型マクロファージと比較して,抗炎症性形質を呈することが分かった。一方,骨髄細胞から分化させたマクロファージや腹腔内マクロファージは,脂肪組織マクロファージのような大きな変化は認められなかったため,脂肪組織局所での細胞間相互作用などにより,抗炎症性形質を獲得する可能性が考えられた。 【期間全体として】マクロファージの貪食は古くから研究されているが,未解明な点が多く,研究を進める中で新たな知見を見出し,研究の幅が非常に大きくなった。今後,継続して,死細胞貪食と慢性炎症のテーマを継続する予定である。
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