研究課題/領域番号 |
21K08530
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
野村 和弘 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (70450236)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 運動 / 加齢 / サルコペニア |
研究実績の概要 |
骨格筋組織では収縮に伴い機械的損傷が生じ、回復再生を絶えず繰り返している。このような骨格筋のリモデリングプロセスには骨格筋細胞、骨格筋幹細胞である筋衛星細胞、炎症細胞、さらにこれらの細胞から分泌されるサイトカインやケモカインなどの各種液性因子が筋損傷部位において統合的協調的に関与していると考えられている。これらのプロセスはトレーニング運動で活性化される一方、加齢とともに低下することが知られているが、運動時のいかなるシグナルが寄与しているのかその実体は明らかではない。代表者が作出した骨格筋特異的β2アドレナリン受容体欠損マウスは、「運動効果に対して抵抗性」を示し、加齢とともに骨格筋量および骨格筋のリモデリング能の低下したサルコペニアの表現型を呈するマウスであった。骨格筋のリモデリング能に関わる因子を同定するために、本マウスの遺伝子発現解析および代表者らが海外共同研究者らと共同開発した骨格筋マルチオミクスデータベースから、運動時に骨格筋から分泌され、加齢でその発現が減弱する因子を探索した。さらにこれらの因子の中からβ2アドレナリンシグナルによってその発現が制御される因子を絞り込み、骨格筋のリモデリング能に関わるいくつかの候補分子を同定した。これらの因子は骨格筋の再生修復時の炎症細胞の集積に関わる可能性が考えられ、引き続き骨格筋のリモデリングプロセスにおけるこれらの因子の役割について解析を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨格筋のリモデリングプロセスに関わる因子の探索の結果、トレーニング運動で活性化される一方、加齢とともに低下するいくつかの候補分子を同定することができた。これは当初の研究目的である、「運動によって活性化され、加齢によって減弱する骨格筋リモデリングプロセスの起点となるシグナルの実体は何か」という本研究課題の核心をなす学術的「問い」を明らかにするための必須の知見であり、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに見出したトレーニング運動で活性化される一方、加齢とともに低下するいくつかの候補分子についてさらに解析をすすめる。アデノ随伴ウイルスを用いたマウス骨格筋への過剰発現実験、shRNAの導入による発現抑制実験、あるいは中和抗体実験などを通じて、これらの因子の骨格筋リモデリング能への関与ついてin vivoでも評価する。さらに、運動後のヒト骨格筋試料や加齢ヒト骨格筋試料を用いた解析を通じ、モデル動物で得た知見のヒトへの外挿性の検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より実験動物の使用匹数が少なく済んだため繰越金額が生じた。次年度使用額は再現性を確認するための実験動物購入費、および消耗品購入費用に充てる予定である。
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