骨格筋組織では収縮に伴い機械的損傷が生じ、回復再生増大を絶えず繰り返している。このような骨格筋のリモデリングプロセスには骨格筋細胞、骨格筋幹細胞である筋衛星細胞、炎症細胞、さらにこれらの細胞から分泌されるサイトカインやケモカインなどの各種液性因子が筋損傷部位において統合的協調的に関与していると考えられている。これらのプロセスはトレーニング運動で活性化される一方、加齢とともに低下することが知られているが、運動時のいかなるシグナルが寄与しているのかその実体は明らかではない。研究代表者が作出した骨格筋特異的β2アドレナリン受容体欠損マウスは、「運動効果に対して抵抗性」を示し、加齢とともに骨格筋量および骨格筋のリモデリング能の低下したサルコペニアの表現型を呈するマウスであった。骨格筋のリモデリング能に関わる因子を同定するために、本マウスの遺伝子発現解析および骨格筋マルチオミクスデータベースから、運動時に骨格筋から分泌され、加齢でその発現が減弱する因子を探索した。さらにこれらの因子の中からβ2アドレナリンシグナルによってその発現が制御される因子を絞り込み、骨格筋のリモデリング能に関わるいくつかの候補分子を同定した。骨格筋特異的β2アドレナリン受容体欠損マウスを用いた解析から、これらの因子は骨格筋の再生修復時の炎症細胞の集積に関わることが明らかとなった。
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