研究課題/領域番号 |
21K08531
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
村尾 孝児 香川大学, 医学部, 教授 (20291982)
|
研究分担者 |
福長 健作 香川大学, 医学部, 協力研究員 (70746932)
井町 仁美 香川大学, 医学部, 准教授 (80380187)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ABCA1 / 脂肪毒性 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
今年度は、HDL代謝、特にABCA1遺伝子発現と脂肪毒性が膵β細胞に及ぼす影響について、特に細胞内情報伝達系に焦点をあて網羅的に検討してきた。2種類のキナーゼの保存された触媒ドメインをもとに、セリン・スレオニンキナーゼを網羅する抗体(Multi-PK)、チロシンキナーゼを網羅する抗体(Multi-YK)を作成した。膵β細胞にコレステロールを負荷し脂肪毒性を誘導し、プロテインキナーゼの発現パターンを上記のmulti-kinase抗体で検討した。Multi-PKでは、コントロールと比較して、脂肪毒性で約200kD, 150kD, 90kDバンドが強く発現され、約60kDのバンドが消失した。上記の変動を認めたバンドに関しては、質量分析法にて解析をおこない約60kDはcalcium/calmodulin-dependent protein kinase IV(CaMKIV)であることを同定した。。 一方、細胞内情報伝達系の下流に存在する転写因子についても、膵β細胞においてCaMKK-CaMKIVの強発現モデルにDNAマイクロアレイを用いた網羅的な解析をおこなった。CaMKK-CaMKIV pathwayを仲介する転写因子の候補としてprolactin regulatory element binding (PREB)が抽出できた。転写因子PREBは、膵β細胞において非常に強い発現を認めインスリン遺伝子やグルコキナーゼ遺伝子のプロモーターに特異的なDNA結合配列を認めた。今回は、インクレチンの一つであるGLP-1がCaMKK/CaMKIV pathwayを介してABCA1遺伝子転写を促進し、インスリン分泌能を回復することを明らかにして、脂肪毒性解除に向けた治療法を見いだしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画に沿って実験が遂行できたが、コロナの影響で物品が到着せず、いくつかの実験に支障が発生した。
|
今後の研究の推進方策 |
ABCA1を抑制することにより、膵β細胞に脂肪毒性が誘導される。代謝異常を検討するためにメタボローム解析を行う予定です。さまざまな脂質代謝、糖代謝の変動が観察された。以前の検討で我々はインクレチンであるGLP-1がCaMKK/CaMKIV pathwayを活性化し、ABCA1遺伝子発現をプロモーターレベルで刺激することを報告している。そこでGLP-1、DPP-IV阻害薬が脂肪毒性を解除できるかどうかメタボローム解析で検討する研究計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の影響で実験器具、試薬が期限までに到着しなかったため、遅延を生じた。 必要な物品が到着次第、当初の実験計画を遂行する。
|